(いやいやいや。これはないだろう!?)

 

と思ったのだが、

 

上司:「お前の場合、このくらいのテンションでいってちょうどいいんだよ! 分かったか!」

 

(まさか……今のテンションでやれ!というのか……?)

 

全力で否定したかったが、身の安全を考えるとやらない訳にはいかない。仕方なしに、

 

ボク:「わ、わかりました……」

 

と、渋々承知した。はっきり言ってバカバカしい限りだ。耳の遠いおじいちゃん、おばあちゃんだったらちょうど良いのかもしれないが、あんな馬鹿でかい声で電話に出られたら、受話器の向こう側の人だって困るに違いない。しかし……しょうがない……。

 

(やれというのならば、やってやろうじゃないか。これでどうなってもボクの知ったことではない!)

 

と半ばやけくそになったボクは、次にかかってきた電話に、

 

ボク:「ありがとうございます! ○○不動産の楯岡がお受けいたしますっ!」

 

と、叫び声にも似た声で電話に出た。あまりのバカバカしさに、思わず「プッ!」と笑いそうになったし、事務員やベテラン社員が含み笑いをしている様子が、雰囲気で感じ取れる。そんな雰囲気に気づいていないのか、上司は一人ご満悦だ。

 

もちろん、毎回毎回こんなテンションで電話に出続けた訳ではない。彼がいないときは、出来るだけテンション高めで電話に出るよう気をつけてはいたけれど、叫ぶような電話の出方はしない。その怖い上司が事務所にいる時だけの限定だ。彼に対するポーズに過ぎないので、彼がいるときだけ、全力で、これみよがしにやってやった!