着せ替えができるという、従来の車にはなかった斬新なアイデアが生まれた背景には、消費増税前の駆け込み需要があったとはいえ1カ月に3万台も売れたタントを抱えるダイハツとは思えないほどの、強烈な危機感があった。

 

それは、若者の車離れに対する危機感だ。つまり、これからの需要の中心を担うはずの世代に「車は要らない」とそっぽを向かれているという現状に対して、タントではない、新たな価値を見い出さなければならないという危機感が、件のアイデアを生んだというわけ。

 

いくらタントが売れていても、それをなかなか若い人が買ってくれないということは、もはや広くて低燃費という魅力だけでは、彼らにリーチが出来ないということでもある。

 

加えて、まるで縮んでいく生け簀に釣り糸を垂らす人が増えていくように、軽自動車にはホンダや日産も参入してきた。しかも「最近では海外メーカーのBセグメントも強力なライバルです」とコペンのチーフエンジニアである藤下修さんは言う。

 

だからといって若者へのマーケティングで「着せ替え」のアイデアが出てきたわけではない。ましてやいい加減なマーケッターが会議で「スマホみたいに着せ替え出来たらウケるんじゃね?」なんていう軽い思いつきで生まれたわけでもない。

 

むしろ「ライトウエイトスポーツカーとは、どうあるべきか?」という、車屋としては至極まっとうなテーマを突き詰めた結果が、「着せ替え」を可能にしたのだ。