昨年実施された、国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の結果が近頃発表された。この調査は、小4・中2を対象に、世界63ヵ国の子どもの理数系の学力を調査する目的で4年に1度実施されているものです。

 

結果を簡単にまとめると、小4の平均点は過去最高で、順位は算数が5位、理科が4位。中2の平均点は前回までと横ばい、順位は数学が5位、理科が4位だった。この16年間、順位の変動はあまりなく、このあたりが日本の子どもたちの定位置となっている。

 

この結果を受けて、文科省は「脱ゆとり教育の成果が出てきた」と声高にコメントしている。小4の点数がかなり上がってきたことを取り上げてのことだ。設問別の得点率等を分析すると、確かに計算力等ではゆとり教育廃止の影響は出てきているように思う。

 

2008年に学習指導要領を大幅に見直し、長年続いてきたゆとり教育からの脱却を図ったわけだが(とは言っても10年前に戻っただけのこと)、一番その影響を受けた科目は算数・数学と理科なのです。

 

ただし、同時に実施された学習に関するアンケートの結果も踏まえて、様々細かく分析すると、手放しで喜んでいる場合ではないことにすぐに気づきます。中2の結果が変わっていないこともありますが、それ以外で私が気になったことを箇条書きでまとめてみます。

 

①この調査は、学習到達度調査(PISA)と違って、どちらかと言うと、作業を中心とした受験用の学力の調査なので、読解力・応用力・記述力等の本質的な学力が上向いているとは限らない。じっくり考える力や書く力はついていないのではないか?

 

②得点で最上位群の点数を取った子どもの割合が、他の上位の国(シンガポールや韓国等)に較べて著しく低い。科目によってはこの2ヵ国の半分にも満たない。成績優秀層が少ないことは、将来的に(特に産業面で)国を強くする視点で心もとない。

 

③勉強が楽しいと答えた子どもの割合が他国に較べて少ない。特に中2においては、数学の勉強が楽しいと答えたのが48%、理科が53%で、世界の中でも低い方になってしまっている。勉強への意欲が低いのは、様々な意味で大問題。(面白いのは、この学習意欲の部分は、発展途上国の方が高い傾向にあるのです。日本の子どもたちは恵まれすぎているのかもしれませんね)

 

④上記の③の問題とも絡むのでしょうが、「将来数学を使う職業につきたいと思いますか?」という質問に対して、そう思うと答えた子どもは18%(世界平均52%)で、世界最少となってしまった。これも由々しき事態。

 

⑤「学校の先生の授業は分かりやすい」と答えた子どもの割合も世界で低い方。世界平均を13%も下回っている。我々塾も含めて、先生たちも反省する必要があるだろうが、どこかで他責傾向もあるような気がする。

 

⑥親に「学校で勉強したことについて子どもと話をするか?」という質問をしたところ、ほぼ毎日と答えた親は12%(世界平均50%)、ほとんどないが26%(世界平均10%)と、関心度がかなり低い。日本の中で見ても、親の勉強への関心度と成績には、明確な正の相関関係があることも分かった。日本の親たちは忙しすぎるのか、勉強は学校や塾へ丸投げというご家庭が多いのだと思う。

 

教育に関わる者の端くれとして、これらの問題を少しでも良い方向に進められるように、日々の現場での指導により一層励むと共に、こういう場を通してどんどん発信していきたいと考えています。