三光マーケティングフーズが、2011年6月に1号店がオープンした「東京チカラめし」は、この2012年12月末までに124店になる。わずか1年5カ月でこの出店数は異例のスピードだ。しかも、今年8月にはフランチャイズ(FC)加盟店募集をスタートさせ、3年以内に500店を目指すという。一見、順風満帆である。

 

しかし、その急成長戦略の裏には三光マーケティングフーズの業績悪化があるようだ。

 

2012年11月、同社は今期(12年7月期~13年6月期)上半期と通期の業績下方修正を発表した。上半期の前回予想は売上高140億円、経常利益9億円。それを、それぞれ130億円(予想対比7.1%減)、2億円(77.8%減)に修正したのだ。通期については、売上高こそ290億円と前回予想のままだが、経常利益は18億5000万円から10億円へ(46%減)に下方修正をした。

 

東京チカラめしが順調そのものなのに、なぜこの結果なのか?それは同社が抱える他事業の不振がある。同社が経営する居酒屋には「東方見聞録」「月の雫」「黄金の蔵」「金の蔵Jr」などがあり、それらの店舗が売上、利益ともに減少しているのだ。その原因は、国内居酒屋需要の減少、競合との競争激化を挙げている。また、それに加えて「東京チカラめしの積極拡大に向けた新規出店の費用など先行投資の増加」を原因に挙げている。FC展開に関するものだ。その結果、今年度業績予想は、売上高は前年度比12%増だが、経常利益が45.5%減となった。 

 

FC展開には初期投資がかかり、一時的には利益を減少させるものである。しかし、その投資は将来の売上、利益の増大、企業の成長のための必要な投資であることが基本である。

 

しかし、私には2つの疑問がある。

 

ひとつ目は、東京チカラめしの出店ラッシュ、FC展開は良いのだが、業績下方修正、とくに利益の減少を招いている現時点で、さらなる利益減少のための拡大戦略が正しいのかどうかということ。

 

ふたつ目は、本当に東京チカラめしが利益向上のドライバーになるかどうかということ。

 

この2点である。

 

ひとつ目だが、すでに東京チカラめしの好調がありながら、業績の下方修正が続いているのが現状だ。確かに成長路線は大事だが、不採算事業の整理縮小することも大事なことだ。赤字の垂れ流しを止め、利益を少しでも確保する。何よりも、ここに手をつけなければならない。東京チカラめしの勢いがある今のうちに出店ラッシュを加速させることで、より大きな先行者利益を得られる可能性は大きい。ただ、それであっても並行して不採算事業の整理縮小は必須の課題である。

 

ふたつ目だが、東京チカラめしの好調はこの先どれだけ続くのだろうかということだ。東京チカラめしは、今までの牛丼チェーン店がやってこなかった「焼牛丼」という隙間をついた。松屋などは、牛焼肉定食などを展開していたが、焼牛丼は無かった。他牛丼チェーン店よりも特徴的で、トレンドを掴んだ「味の濃さ」もプラスに働き、あっという間に人気店になった。しかし、これから先は焼牛丼でも競合が増えるだろうし、出店すればするほど牛丼チェーン店との競合も激化する。すでにオープンしている店の中には、出店当時の勢いも感じられない店もある。

 

その中でFC展開をする。ロイヤリティも不要、スーパーバイザー(SV)の定期的な臨店指導を不要という異例のFC展開のようだ。そこにも不安要素がある。SVがいないということは品質管理、ブランド管理、店員管理が出来ない。つまり、材料とレシピと道具だけを提供して、あとは独自でやってもらうということだ。これはだめだ。

 

吉野家を始めとする牛丼チェーン店は、安価を追求し続け、利益の増加方法を見いだせない袋小路に入っている。業種は違うが、不況の中、成功し続けて来たマクドナルドでさえ、安価な商品によるメリットが計画していたほどないことに気づき、出店ペースを抑えたほどだ。

 

また、サービスやQC面でも問題になる可能性がある。いままで「安かったらサービスは気にしない」と思っていた消費者も、安くてサービス(店や店員)が良くないとリピートしないようになっている。つまりSVがいないということは、実はFC店舗にとっても良くないことになる。烏合の衆のようなブランドになりかねない。

 

他社であるが、ワタミもかつては品質が良い、サービスが良いで有名な居酒屋チェーンだった。他の居酒屋チェーンとは一歩も二歩もレベルが違っていた。しかし、事業を幅広く展開し、ワタミそのもののFC展開を加速していった結果、残念ながら今はサービスが良いとは言えない。ここ1年くらいで2、3度、ワタミを利用したが、どの店もサービスがなっていない。かつてのワタミとは異なり、渡邉会長がいくら笛をふいても、CMでイメージ戦略を展開しても、実が伴っていないのは逆効果だ。

 

三光マーケティングフーズの戦略も、絵に描いた餅のような印象を受ける。もっと、やるべきことはきちんと一つ一つ、時間をかけなければいけないものは時間をかけてやるべきなのだ。その手間をかけて気づいた地盤こそが、ある時期に成長の源泉となるのだ。私が三光マーケティングフーズの経営者もしくはコンサルタントであれば、もう少し違った事業計画になるだろう。また、現計画を進める立場であれば、もっと戦術レベルを変えたいところだ。