以前、大好きだった人のダメな姿を突きつけられるのは結構つらい。一時期であっても、自分が恋い焦がれた人のダメな姿を目の当たりにするのは、本当に切ない。

 

今回の『美味しんぼ』騒動の概要はご存じの方も多いだろうから、概要はリンク先に譲る。

 

「福島周辺で鼻血出る人が続出」 「美味しんぼ」で編集部コメント発表も炎上止まず

 

「美味しんぼ」原作者「鼻血ごときで騒ぐ人は発狂するかも」 「原発」続編は「もっとはっきりしたことを言う」と予告

 

編集部が画像ファイルでコメントを発表し、「検索回避策だ!」とネット上で叩かれる姿を見ると、炎上狙いでわざと燃料を投下しているかのような念の入れっぷり。こりゃヘタすると国会でとりあげられかねない勢いじゃないか……。と思って、国会の会議録をさかのぼってみた。すると震災後、北海道に避難した女性が鼻血について言及していた。質問者は自民党の長谷川岳参議院議員。

 

私は文科省のホームページのデータを見て避難を決めました。もうその一歳児の甲状腺被曝のラインがちょうど私が住んでいたところの端っこに引っかかっていたんですね。それで避難を決めました。北海道に避難している方たちといろいろ話をしまして、その中で、例えば鼻血なんですけれども、そういうような症状を訴えていたお子さんが非常に多かったです。

 

原因は特定されていない。だが当時「鼻血が増えた」と感じていた人はいたというわけだ。もっとも医学的には鼻血と原発事故の関連は否定されている。Web上で医学関係者の意見を見ると「高線量被ばくでしか発現しない鼻血が低線量被ばくで起きると思わせるような描写自体がトンデモ」「あの過酷な状況下ではストレス由来の鼻血と考えるのが自然」という論調が多い。5月8日には環境省も鼻血と放射線被ばくの関係を否定する見解を出した

 

今回の『美味しんぼ』では、震災から3年が経過した現在を描いているのに、このタイミングで「鼻血」を持ち出してきた。読者を誘導しようという意図が見え隠れしている。近年の読者は作家のこういう意図を見事に見透かす。ノンフィクションめいた作品で、こういう誘導をかけられるのをイマドキの読者は嫌う。確かに原発問題はフィクションやエンターテインメント作品の文脈には乗せづらいが、ノンフィクションとして主張するには、604話はあまりにコミュニケーションが稚拙だった。