本来スロープを使う車いす仕様車にはベース車があり、床部分を専用のものに入れ替えるなどの改造をして車いすを乗せられるようにする。床を変えるのは、スロープ角度を低くして車いすを乗せやすくすためと、乗降時や車内での車いすの乗員の頭上の空間確保のためだ。

 

別の見方をすれば、世の中には車いすの人のために(福祉車両のために)最初から開発された車はない、ということ。

 

福祉車両専用車が開発されない理由は、売れる台数が限られているからだ。総務省が「すでに日本は超がつくほどの高齢化社会に突入してまーす」と宣言する時代になったとはいえ、2012年度の車いす仕様車の販売台数は約2.6万台。1年かけてやっと当時のトヨタプリウス1カ月分の販売台数に手が届くかどうかだ。

 

では車いす仕様車のユーザー側のメリットはというと……車いすを乗せられることくらい。デメリットはコスト増によって販売価格が上がること、工場のラインから外れるので(完成車を改造するので)納期がはっきりしないことなど。

 

つまり、デメリットのほうが大きい。

 

それでも各メーカーが福祉車両を作り続けているのは、どんな人にも移動の自由を、という社会的意義があるから。

 

とはいえ社会的意義だけで福祉車両を作るというのは、上記のデメリットのように限界がある。そこにホンダのN-BOX開発責任者、浅木さんは挑戦した。