牛丼戦争”と呼ばれる低価格を競う激しい争いも一段落し、牛丼業界では新たな次元の争いが繰り広げられています。

 

今回はすき家、吉野家、松屋といった“牛丼御三家”の各社の戦略をフィリップ・コトラー教授の『業界内のポジションに応じた戦略』に照らし合わせて、その妥当性を検証していくことにしましょう。

 

■吉野家の戦略

牛丼業界において、吉野家はかつて“絶対王者”としてリーダーに君臨していましたが、2008年9月にすき家に店舗数で追い抜かれると、業界2位としてすき家を追いかけるチャレンジャーの立場となりました。

 

2位に転落以降、吉野家にとっては苦しい戦いが続いていましたが、2013年4月には、それまでライバル2社に比べ価格の高かった牛丼を380円から一気に100円値下げして、ライバルと同等の280円に設定。

 

消費者に大きなインパクトを与えて、これまで奪われてきた顧客を再び奪取する大胆な戦略に打って出ます。

 

ただ、値下げ当初こそ思惑通りに大幅な客数アップを実現して客単価の減少を補い、最終的な売上アップにつなげたものの、6月には早くも勢いを失い、値下げの効果は短期的なものに終わってしまいます。

 

そこで、繰り出した次の一手が『牛すき鍋膳』。

 

吉野家はこれまで顧客に浸透していた「うまい、やすい、はやい」というポリシーを破ってまで、テーブルでゆったりと“一人鍋”が堪能できるメニューを投入してきたのです。

 

この『牛すき鍋膳』がチャレンジャーの戦略として有効だったのは、それまでの『牛丼』というもはやコモディティ化した商品でリーダーであるすき家と価格競争を行うのではなく、580円という高価格で差別化を図ったポイントでしょう。

 

チャレンジャーがリーダーを出し抜くには“差別化”が定石となるのです。

 

吉野家はこの『牛すき鍋膳』が顧客の支持を受けて、ライバル2社が売上アップに苦しむ中、業績は独り勝ちの様相を呈することになります。

 

更に4月の消費税増税のタイミングで牛丼を20円値上げし、増税によるコストアップを価格に反映することを検討しています。これは、牛丼においても差別化を推進し、ライバルより高い価格でも顧客を呼び込もうというチャレンジャーに適した戦略といえるでしょう。