マツダCX-5やアテンザ、アクセラに採用され、人気となっているクリーンディーゼルが、石原都政時代の「ディーゼル=悪者」イメージをまさにクリーンに晴らそうとしている。しかも、同社のディーゼルエンジン「スカイアクティブD」の開発裏話は、まるで「スカイアクティブD」という銘刀が、バッサバサと濁った空気を切り裂くかのようだった。

 

内燃機関にモーターを組み合わせるハイブリッドカーがいつの間にか当たり前のようになっている今の時代において、今からハイブリッドシステムを開発して他社を追い抜くほどの体力などないという苦しい社内事情もあり、同社のエンジン性能開発部の部長である中井さんは「理想の内燃機関」を突き詰めていった。

 

ディーゼルエンジンの理想は、空気と燃料をよく混ぜて、よく燃やすこと。点火プラグの必要なガソリンエンジンと異なり、ディーゼルの場合は空気を高温高圧に圧縮したところに燃料を噴射すれば自己着火する。

 

圧縮比を高めれば着火しやすくなるが、不均一な燃焼がおこりNOxやススが出てしまう。それらを取り除くための後処理装置を備える方法が一般的だったが、その分コストが上がる。

 

一方、圧縮比を低くすれば不均一な燃焼を抑えやすいが、燃焼室の温度が低くなり、数値で言えば圧縮比を14にまで下げると着火しないと言われていた。

 

ところが中井さんは「コモンレールエンジンの開発実験中に、圧縮比を下げても条件次第で着火するんじゃないかと思っていた」そうだ。そこで、1年間毎日ずっと燃焼パターンのシミュレーションと実験を繰り返した。

 

気筒数、圧縮比、燃料噴射の穴の数や大きさ、燃焼室のサイズ……関係するパラメータをいちいち変えながら、コンピューターでのシミュレーションと実験を繰り返し、それぞれの結果をフィードバック。パラメーターが多い分、組み合わせの数は膨大で、その中から燃焼する組み合わせを探すという、とても地道な作業を経て、ついに低圧縮比のディーゼルエンジン開発に成功した。