実家にいた頃の話である。我が家では茶の間、テレビの正面右側に父が座ることになっており、その横には小さな本棚があった。何種類かの本が置かれていたが、そのうち、私が覚えているのは地図、時刻表、そして辞書類である。

 

テレビを見ていて知らない場所、自分が行ったことのない場所が出てくると、父は地図帳を広げ、さらに行ってみたい気になったところに関しては時刻表を広げて、どのルートで行くといいのかを真剣に考えるのであった。辞書はもちろん、知らない言葉が出てきた時のためである。

 

そんな家だったので、私は自然に地図、時刻表、辞書類が好きになった。今のようにネットがあって日本各地、世界各地の画像、動画を好きに見られる時代ではない。だから、テレビで出てきた見知らぬ土地は激しく妄想を掻き立てる場であり、そこへ行くための道筋を教えてくれるものとして、地図、時刻表はこの上もないツールだった。