ただ、たしかに産後のつらい時期をパートナーである夫が理解してくれないというのは大問題である。

それが、産後クライシスという火に油を注ぐことは確かだ。

それはそれで父親の自覚というものを猛烈に促したい。

しかし、1990年にアメリカで、働く両親を対象に行われた調査では、次のようなことが報告された。

・父親の場合、同僚や上司と衝突した日に帰宅すると、いつもより子どもの相手をしなかった。ほとんどの場合、自室にこもってしまった。

・母親の場合は仕事でストレスを感じた日は帰宅してから子どもの相手をいつもよりよりよくすることがわかった。いつもより楽しく子どもの世話をしていた。

ストレスを感じたとき、男性は子育てから遠ざかり、女性は子育てに向かうのである。

ということは、産後クライシスで、夫婦間の緊張が高まると、男性はますます子育てから遠ざかり、女性はますます子育てに向かうという作用が働くと考えられる。

自然の采配により、夫婦の間の溝がますます深まるわけだ。

 

また、UCLAの心理学者シェリー・E・テイラーは、「女性は人に頼る方法でストレスに対処する傾向が男性より強い」と主張している。

これらをおおざっぱにつなげて考えると……、

「産後クライシスのストレスで、女性はますます子育てに向かい、かつ、まわりの人に頼ろうとする。そのとき、夫は、逃走する」

という構図だ。

昔はそれで良かった。

子育ては夫婦というより、大家族や地域で行っていたから、妻のストレスは解消されやすかった。

でも核家族において、女性が頼れるのは夫しかいない。 

しかし、産後クライシスの中で、男性が子育てに向かうということは、子育てから逃走したくなる本能に逆らう強い意志をもたなければならない。

……ということを、決して男性の肩をもつわけではなく、まずは予備知識として知っておいてほしい。