「お客さまは神様」

 

「お客様の小言は神の声」とパナソニック創業者、松下幸之助が掲げるように、長い間、日本の企業は、この考え方を当たり前のものとして受け入れて来た。

 

この言葉の背景には、高度経済成長を中心に、知人、友人、隣人と同じような暮らしをしたいという日本人の願望があった。「一億総中流」と呼ばれたように、多くの日本人は同じようなモノを欲しがり、同じような希望を抱いていた。企業としては、あるお客さんの要望を聞くことは、他の多くの日本人に当てはまることと類似だったのだ。したがって「お客さまは神様」という言葉は、まさにその通りだった。

 

しかし、もうその時代は終わった。

 

日本人の嗜好やライフスタイルは多様化している。また以前と比べて、貧富の差も少しづつ開き始めている。企業にとって「お客さまは神様」という言葉は、時には企業にとってマイナスをもたらすことすら出始めた。

 

例えば先日、ある一流ホテルで打合せをすることがあった。そこは大きなホテルではないが、富裕層を中心に利用されるホテルだ。そこで目にしたのは、Tシャツ、短パン姿の若い男性、妻と思われる女性、そしてそこかしこでタバコを吸っていた母親と思われる女性だ。