ゆるキャラグランプリ2012は、昨年の王者、熊本県の「くまモン」が辞退し、今治市の「バリィさん」がグランプリを受賞しました。ゆるキャラグラ ンプリの投票は、ID登録した1メールアドレスに付き1日1回までという仕組み。地域の人々の熱烈な応援が反映されやすい点に特徴があるようです。

 

ゆるキャラがムーブメントとなり、「くまモンはなぜ黒いの?」という質問を受けることがあります。キャラクターのデザインをされた水野学氏は、「熊本城が黒いことにちなんで全体を黒にした」とおっしゃっていますが、質問者が求めているのは、こういった回答ではないだろうと感じます。「ゆるキャラ」と「黒」のイメージが、重なり合わないことに、違和感を感じるからではないでしょうか?

 

新井克弥氏(メディア研究者、関東学院大学文学部教授)は、ブログ記事「くまモンは、ゆるキャラではない!」の中で、くまモンは、ゆるキャラのようでいて実は徹底的にコンセプトを煮詰めたキャラクター、いわば「なーんちゃってゆるキャラ」である。90年代以降キャラクターの基調の一つとなった二つのコンセプト、「物語性の欠如」と「視線の喪失」を忠実に踏襲しているとおっしゃっています。見る人が自分の思うがままにそこに意味を読み取ることができる……それが、くまモンの魅力のようです。

 

黒い服を着ると、かっこよく見えたり、怖そうに見えるのは、着る人のキャラクターを包み隠す、防護服のような働きをすることがあるからです。「物語性の欠如」を覆い隠す上で、「黒」は実に都合のよい色です。見る側は、物語が隠されているのではないかと感じ、想像力を働かせます。真っ黒なくまモンを見つめても視線が合わないから、恐さは感じません。真っ赤なほっぺがダサ可愛くて、愛着がわいてくる……キャラとして愛される絶妙なバランス感覚が見えてきます。

 

しかし、ゆるキャラグランプリを辞退したり、グッズや書籍などが増えるにつれて、くまモンの仕掛人たちの存在や意図がクローズアップされつつあるようです。くまモンとは洗練されたゆるさであり、計算しつくされた詰めの甘さによって、抜け感のあるスタイルを確立しています。くまモンの「黒」に託された意図やメッセージが明らかになるにつれて、黒という色に新しいイメージが生まれつつあるのではないでしょうか。黒はかっこよさやオシャレであることを代弁する色ではなくなってきた今日、黒い服でキメすぎると、かえって中身がない人に見えてしまうことも……? くまモンの存在は、ファッションカラーの黒にも少なからず、影響を与えているのではないでしょうか。