「ゆめぴりか」「神子原米(みこはらまい)」…米。
「オリーブ牛」「いわて奥州牛」…牛肉。
「大樹じゃがポーク」「とようら旨み麦豚」…豚肉。
「江戸東京野菜」「鎌倉野菜」…野菜。

 

次々に登場する、さまざまな農畜産物のブランド。消費者の心を掴むため、競い合うかのように、ブランド化を目指す。商売におけるブランド化はセオリーであり、成功すれば、経営は安定する。

 

実際、ブランドを確立した生産者たちは、満足そうに微笑んでいる。誰もが夢見るのは当然である。だが、業界全体を見渡すと、ブランド化が進むほど、その農畜産物の売り上げは下降する傾向にある。牛肉を例に取ると、わかりやすい。牛肉が売れなくなって久しいが、BSE問題があったからだと思っている生産者も多いだろう。

 

だが、それはキッカケに過ぎない。一時的に牛肉を控えたにせよ、ほとぼりが冷めれば、また買い始めるのが消費者というものだ。

 

ところが、牛肉は見放された。

 

品薄になった時に上昇した価格をそのままにしているだけではなく、価値を高めようと、ブランド化に走ってしまった。よく食べられていた頃の価格に戻せばいいものを欲を出してしまったのである。売れないから、さらにブランド化を目指してしまう。

 

米でも同じことが起こっている。

 

品種改良や栽培法の工夫で、美味しい米が毎年のように登場する。新しもの好きがすぐに手を出すので、注目される。
すなわち、売りやすくなる。ところがここに、眼に見えない大きな問題が発生している。あらゆる産地がブランド化を目指すことで、いままで安かった普通の米が少なくなり、価格が上昇している。ここで困るのが、外食産業と食品加工メーカー、低所得者層である。

 

安い米が手に入らない。

 

米が豊作であっても、価格が上昇するというおかしな現象が起きている。いまの日本は「一億総中流」と言われた時代ではない。「総下流」と言っても良いほど、カツカツの生活をしている。

 

そこで米が高くなると、何が起こるのか。

 

安い米を求めて、彷徨うのである。アメリカ産、オーストラリア産、中国産に、飛びつくようになる。安全性を疑っていた人でも、生きるためには妥協せざるを得ない状況となってしまう。そして、声を上げるだろう。「安い米を輸入しろ!」。いまは輸入制限されていることに我慢しているが、この状況が続くと、シュプレヒコールの音量は高くなる。外食産業、メーカー、低所得者層が手を組み、政府を動かすことになる。

 

『TPP参加』。

 

経済のためにも、庶民生活のためにも、安いものを輸入しなければならなくなる。誰もが安全な国産品を欲しているが、高くて買えない。庶民にブランド品など必要ないのである。生きるために、安い食品を手に入れたいだけ。

 

ブランド化で価格が上昇するほど、TPP参加を望む人は増える。業界が廃れるのは自業自得だ、と言わざるを得ない。