いよいよ年末が近づいてきて、世の中の動きも慌ただしくなってきていますね。

 

そんな中で12月に国政選挙が行われるのですが、そのテーマの一つになっている消費税の地方税化について若干コメントしてみます。

 

ここで敢えて申し上げるならば、筆者は消費税アップは積極派。筆者の金融バックグラウンド感覚においては、危機的財政状況下で国家の信用維持に直結する消費税問題を先送りすべきではないとの相場観が働きます。とにかく、このまま放置しておくと日本国債がヘッジファンドの餌食になりかねないと懸念しているため、財政再建に係る道筋はしっかり付けるべきとの思いがあるのです(いわゆる「歳出削減による財政再建をすべし」との総論的議論は、ヘッジファンドにとって何ら意味をなさない=道筋にすらなっていない、との強い認識も背景にあります)。

 

といいつつ、この消費税増税賛成/反対の議論に深入りするのではなく、消費税の地方税化に関し焦点を当てて論点整理をしてみます。もちろん、政策的話ではなく、地方税化によるリスクとは何かを考察するものです。

 

1. 地方の徴税能力は本当にあるか?
まずはこれが気になるところ。なぜなら、消費税の計算って意外に複雑で細かいのです。なので、確定申告→納付→税務調査→追徴課税といった一連の徴税手続きを地方の県税事務職員がきちんと漏れなく出来るのか、実際問題として気になります。

 

現在、消費税は法人税とセットになって税務署に申告するから、法人税の税務調査=消費税の税務調査と同義語で、納税申告の正確さはある程度担保されています。それでも、消費税にはいわゆる非課税事業者の取り扱いがあったり、仕入税額控除の簡易計算があったりして、政策的な「徴税漏れ」が相当額起きているのは事実。

 

恐らく、自社において“益税”(本来原則的に計算した消費税納付額と、容認された簡便計算による消費税納付額の差から生じる差額)がいったい幾ら発生しているか、殆どの企業が分っていないかと思います。

 

そんな中で、税率アップ(ちなみに1%消費税率アップ=1兆円の税収増になるようです)と地方税化がセットで起こると、徴税漏れが相当多額に起きそうな気がしますね。

 

このことは、地方税の徴収体制が国税ほど鮮麗されていない実情がある中で、更に複雑な消費税の徴税機能を移管すると、混乱と併せてミスが結構起きるのではと予測されます。更には、こういった徴税能力不足につけ込んだ悪質な租税回避(いわば脱税)も起きるのではとの懸念も大ありです。

 

意外に(というか、相当程度)税務署の徴税能力は高いのですが、それと同等のレベルを地方(要するに地方の県税事務所)が確保出来るのだろうかと、老婆心ながら思う次第。

 

2.流通取引の阻害要因にならないか?
そして、どちらかというとこっちの方がより気になる点。

 

地方税化する=個別裁量が入りやすくなる、といった問題が想定されます。個別裁量を分かり易くいうと、「軽減税率」とかいう特例を地方が独自に打ち出すこと。さらに進むと、「ウチ(の県)の方が税金まけるよ!」として、消費税のダンピング競争が始まることもあり得ます。実際に住民税は、そんな税率競争を打ち出していることろもありますから、こういった懸念はゼロではありません。

 

住民税は年一回の確定申告ですが、消費税は流通税なので、一つ一つの取引ごとに税額を固めなければなりません。そうなると、一律税制(税率や特例の有無など)化ではスイスイ進む取引処理が、消費税の扱いをめぐって効率化がそがれる懸念も生じてきます。「あっちの(県の)ヤマダ電機より、こっちの(県の)ヤマダ電機の方が税金が安いぞ」みたいな、価格ドットコム競争が起き始めると、収拾が付かなくなるかもしれませんね。

 

ちなみに、欧州でも国ごとにVAT(付加価値税)の税率が異なるから、取引上の制約になる懸念もありますが、やはり制度としての成熟度合いが違いますし、いずれにおいても国税として徴収ししていますから、国境がいわば一つの税の境界線として機能して混乱が生じることは殆どありません。日本の消費税における政策的認容”徴税漏れ”制度は、実はVATのインバイス方式課税にすればかなり防げるハズ。でも、そんな議論は全然見えてこないです。

 

そして日本の場合、地方レベルに行くほど政治的圧力で強くなり、特例が増えていく傾向があるから、気が付いたら複雑怪奇な消費税制度になってしまったなんとことになりかねないです。

 

複雑化すると、場合によっては前述1で指摘する悪質な租税回避が横行する懸念も出てきますから、地方税化を具体化するなら、同時に制度設計を見直すことが肝要との問題認識ありなのです。とにかく、第二の年金問題みたいなことになるのは避けたいこところ。

 

上記論点は、筆者が欧州駐在時に業務としてアドバイスを行っていたVAT(欧州付加価値税)の実務処理において結構苦労したので、実感を持って指摘することが出来ます。

 

制度が複雑になればなるほど、また(徴税に関する)参加者が多くなればなるほど、抜け穴や漏れが増えるのは一般的理解です。なので、理想(政策)と現実のギャップをどのように整合させるか、仮に地方税化が実現した場合には、詰めるべき論点は多そう。

 

とはいえ、筆者的には、複雑になるほどアドバイス機会は増えるので、実現すること自体は賛成といえば賛成の立場かも。。。