スポーツが流行っている。
一般人の趣味としてはもちろんだが、それに合わせたマーケティングテーマとしての「スポーツ」である。
その中のひとつがマラソン。
ウェア・シューズ・栄養補助食品なども売り上げを伸ばしている。
それだけではない。
皇居周辺には、会社帰りのランナーが利用する、シャワー設備のあるロッカールームまで、できている。銭湯も満員。
山ガールは、新しいファションを生み出し、中高年の登山客を相手にしていた山のお店は、若い女性で賑わっている。
ストリートダンスの教室には小学生が群がり、ウェアはもちろん、ヘアスタイル・メイクまで、凝りに凝っている。
なぜ、ここまでスポーツが流行るのか。
私は思う。
いまの日本の危機的状況に関係しているのではないかと。
経済が落ち込むと、仕事・収入が減り、自由に遣えるお金が無くなる。
バブル期のように、湯水の如く快楽に注ぎ込むことができない。
すると、生活のために節約志向が定着してくる。
将来への不安も生まれ、世の中が暗くなりがちで、楽しくない。
そんな時、社会は明るい話題を求める。
それが、五輪やワールドカップだ。
日本人が世界で頑張っている姿を見て、“勇気をもらう”と、自分を慰めている。
そして、自分もやってみたいと考えるようになるのである。
しかし、野球・サッカー・フィギュアスケートなどは、大人になってからでは、容易に始めることはできない。
そこで、自分にできるスポーツを探す。
それが、マラソン・登山・ダンス・自転車などである。
だが、節約志向の生活であるがゆえ、一度は躊躇する。
そこで今度は、お金を遣う理由を考える。
つまり、自分への言い訳。
納得させなければいけないのである。
「普段節約しているし、このままでは息が詰まる。
楽しみを持つことも大切だ」と、スポーツを始めるための準備に掛かる。
ここに眼をつけたのが、スポーツ関連メーカーである。
スポーツの楽しさをこれでもかとアピールする。
テレビの情報番組や雑誌などでも特集が組まれ、この不況下でもメーカーは活気づいている。
スポーツ関連だけではない。
ある和菓子メーカーが、「スポーツようかん」なるものを発売した。
スポーツ時に必要なエネルギー・塩分を手軽に補給できるように開発した羊羹である。
一瞬戸惑う感はあるが、よく考えられた商品である。
栄養分を凝縮したシリアルバーなどを嫌がる人もいるし、サプリメントでは味気ない。
羊羹の甘さは、疲れた身体が欲するもの。
和菓子の方が好きな人も多い。
面白い試みである。
少なくとも注目度は高い。
このように、「スポーツ」に関連づけた商品・サービスは、これからも伸びていくマーケットだと推察できる。
ただ、日本人は流行に踊らされやすい。
そして、飽きやすい。
成長期・成熟期を読み間違えると、大きな失敗となる可能性も高い。