(ネット上には既にWikipediaの「ヱヴァンゲリヲン新劇場版 Q 」も存在するので、ストーリーにも触れた記事となることをご了承ください)

 

神話的要素に神話を上塗りしてきたエヴァンゲリオンが、ついに神話を解体する方向へと走り始めた。それは、新劇場版が終りに近づいているかもしれないが、ラストのアスカ、レイ、シンジだけが歩くシーンには、あらゆる呪縛からとけた清々しさを感じ、庵野秀明は、ようやくエヴァとちゃんと向き合う、決着をつけようとしているのかなと感じた。それは、スタジオジブリ製作の特撮短編映画『巨神兵東京に現わる劇場版』がQの前に同時上映されることでも、意味性の復帰、エヴァの原初的な衝動を示すかのように映った。

 

新劇場版 序が上映され、庵野秀明はガイナックスを退社しているが、破にしても今回のQにしても、見る側を突き放さず、制作に対してたっぷり愛情を注いでいるようにも思う。TV版はもとより、それを補完しようとした劇場版にも投げ槍な要素を含み、自分の分身であるエヴァがある意味、違う解釈されていくことにかなり抵抗していた表現が多々あったが、一度は冷却しかけたエヴァがゲームソフトなどによる熟成と2005年以降、パチスロ・パチンコ機により、新たなファンを巻き込んで覚醒すると、エンタテインメントアニメとして違う気流に乗ったように再生しはじめる。

 

これは、どういうことか?

 

一度、エヴァから離れるために、実写にも目を向けた庵野秀明だが、おそらく自分が想像する以上に、エヴァには、庵野秀明のすべてが注ぎ込まれていた。離れよう離れようとする度に、離れられないことに気がついたのではないか。そして、初期にはガンダムの富野喜幸や師匠の宮崎駿からエヴァの内向性と残虐性に痛烈な批判を受けていたが、場末であっても時代の無意識を呼吸しているパチンカーから絶大なる支持を得たとなると、アニメ界で評価される以上に一気に孤独感が融解したのではないかと思われる。

 

第1使徒から第17使徒、リリス、リリン、ゼーレのあたりの話は難解で、庵野秀明がつくりあげた神話だが、国際連合直属の非公開組織NERV(ネルフ)はエヴァンゲリオンにとって、揺らいではいけない基地なのだが、Qでは葛城ミサトをはじめリツコ、アスカ、マリなどが反ネルフ組織ヴィレに所属し、ネルフのエヴァを殲滅しようと活動しているところから始まる。そしてシンジとカヲルはダブルエントリープラグのネルフのエヴァ13号機に乗って、レイのMark.09、アスカの2号機、マリの8号機と交戦することになるのだが、ゲンドウの罠によって4thインパクトが起ころうとする。これは何とか食い止められるが、人類補完計画とは神話的な意味があろうとも、現実的には破滅の道であり、それをゲンドウが先導していることに驚く。シンジはネルフの13号機に乗るが、それは世界をやり直せると思ったからであり、リリスとMark.0.6に刺さる槍を抜いたのも世界をやり直せると思ったから…しかし槍を抜いた結果は使徒が活動再開してしまい13号機が覚醒、それを引き金に4thインパクトが発動しはじめる。

 

ここには今までの乗り越えられないシンジではなく、自分の意志で乗り越えようとしたシンジがいる。

 

また、疑問として、セカンドインパクト、サードインパクトが起こった真っ赤な地球に、もはや救われるものがあるのかということ。

 

エヴァンゲリオンとは、ストーリーの太骨は、父ゲンドウと母ユイ(レイ)、シンジのエディプス・コンプレックスの物語ととらえることもできる。そしてQにおいては、父にはめられていたとはいえ、世界をやり直す一心で父とは真逆の世界再生を目指し、父を乗り越えようとしたシンジがいた。

 

神話と呪縛(エディプスコンプレックス)の終わった世界の中で、歩き始めるアスカとシンジとレイ。行くあてもないはずなのだが、ヱヴァンゲリヲン新劇場版のFINALは存在する。

 

予告では、迷彩色のエヴァが多く出ていたので、またエヴァ同士の戦いがあるのだろうが、何を目的とした戦いなのだろうか?

 

それにしても1995年のTV版放映から、2012年の今まで17年。どんどん期待が増幅していくアニメは珍しいのだと思う。以前、それは1995年以降の新コードで表現されているからと論じたことがあるが、それは=殺伐とした社会のコードとマッチしていることを意味する。

 

そうであるならば、Qの神話の解体とエディプスコンプレックスの単純な克服はありえないことになってしまう。ドゥールズ・ガタリが「アンチ・オイディプス」で示したように、新たな関係性によって、別のコンプレックスが生じてしまい、世界が明瞭に開示されなければ、精神的な解放はありえないからだ。

 

そういう意味でも、FINALのアスカとシンジとレイがどういう関係を築くか、非常に興味深い。