「中堅・中小企業を志望する若者が増えた」
「いや、やっぱり大企業志望だ」
「大企業も潰れる時代なのに、なぜ、中堅・中小企業に目を向けないのか?」
「ソニーもホンダも昔は中小企業だったんだぞ(ドヤ)」
「若者よ、ベンチャーだ!会社に人生を預けるな」

 

毎年のことではあるが、就活の時期になるとこんな意見が飛び交う。

実際、どうなのだろう?

議論の交通整理をしたい。

まず、この手の報道や言説の「ウソ」について整理しよう。

 

■「中堅・中小企業を志望する若者が増えている」のウソ
就職情報会社が発表するアンケート調査や、新聞社の報道でもこんな話がここ数年、伝えられる。

例えば、2013年卒の学生について言うと、文化放送キャリアパートナーズの調べでは就活を始まる前の時点で、「大手への就職にこだわるか」という問いに対して、「大手企業かは気にしない」と答えた学生が53.5%(前年度:40.6%)だった。「できれば大手企業に就職したい」と答えた学生は38.1% (前年度:52.1%)だった。「中小・ベンチャー企業に就職したい」と答えた学生6.8%(前年度2.8%)と合わせると、中堅・中小企業志望が大企業志望を上回っていた。他の企業の調査でもこの傾向が顕著だった。

 

これは注意して読み解かなければならない。

 

まず、「人の意識」は「数字」で動く。求人状況が厳しければ、「万年売り手市場」とされる(これも実態と違うことは後述する)中堅・中小企業の志望者が増える。これは、今も昔も変わらない傾向である。なお、求人状況が学生にとって厳しいものになったら、成長企業は採用に力を入れるというのもよくある光景だ。ここぞとばかりに人材獲得に動くのである。

 

ちなみに、この手の調査はよく見ると、聞き方が「中堅・中小企業を志望するか」というものにはなっていない。たいていは「中堅・中小企業”も”志望するか」や、この調査のように「大手企業かどうかは気にしない」などの聞き方になっていて、ニュアンスが微妙に異なるのだが、報道では「中堅・中小企業志望の若者、増える」などと伝えられてしまうことも覚えておこう。

 

なお、この件について、私は前述した、「人の意識は数字で動く」という論点の他に、学生がそう「言わされている」とも感じる。報道もそうだが、キャリアセンターの指導により、「大企業にだけ目を向けるのはダメ」と刷り込まれているのではないだろうか。あくまで推測ではあるが。

 

だから、「中堅・中小企業志望」だと言ったところで、具体的な社名は言えない。ある都内中堅私大で500人を前に講演した際に、中堅・中小企業を志望の学生に挙手をお願いしたら、実に7割がそう答えた。ただ、「行きたい中堅・中小企業の名前を言える人」は10人に過ぎなかった。

 

これが現実だ。

 

余談だが、キャリアセンター職員によると、ここ数年「優良B2B企業に行きたい」「優良中堅・中小企業に行きたい」と言う学生は増加中だという。ただ、「具体的にどこ?」と聞くと「優良B2B企業です」と答えるのだとか。私もそういう学生をよく見かけた。

 

後述するが、これは学生が悪いわけではなく、出会いの場、理解する手段がない(少ない、知られていない)のだからしょうがない。

 

■学生は中堅・中小企業を「選んで」いる(選ばざるを得ない)
前述した調査にしろ、リクルートが行なっている求人倍率調査にしろ、この手の調査は「就活前」あるいは「就活が本格化する前」に行なわれる。

 

実際はというと、大手に行ける学生などは、就活生(各年度において42~45万人だと推定されている)のうちの数割にすぎない。例えば、リクルートワークス研究所の「第29回ワークス大卒求人倍率調査(2013年卒)」によると、1000人以上の企業の求人総数は156400人。ただし、あくまで推定なので、この数までは実際は採用しない、甘めの数字なのだが、これで比べるだけでも、1000人以上の企業に行くのは就活生の1/3程度ということになる(かなり甘い推定である)。

 

就活の報道と言えば、合同企業説明会やリクナビ、マイナビなどが取り上げられる。大手の採用が一段落した5月下旬以降、キャリアセンター経由などで中堅・中小企業が出会うことによって、じわじわ内定率が上がっていくのである。

 

要するに最初は大手企業に応募をし、その後、中堅・中小企業に応募という流れなのである。

 

■「大手も潰れる時代だ」のウソ
大手は国や他社が救済する。

 

以上。

 

まだまだあるが、この辺で。

 

そもそも論で、中堅・中小企業と出会う場がないこと(少ないこと、認知されていないこと)、安心できないこと、採用活動が洗練されていないこと(魅力を伝えるのが下手 もちろん、企業による)、採用活動が始まるのが遅いことなどが原因だと言えるだろう。

 

なお、よく「中堅・中小企業は売り手市場だ。応募すれば楽勝だ」という論がある。たしかに、「全然応募者がいない。誰でもいいから欲しい」という企業は、ある。人材の充足率などを見ても明らかだ。

 

ただ、「中堅・中小企業への就活」が楽勝だとは、私はまったく思わない。開示されている情報が少ない、各社の募集は若干名であり狭き門(しかも、営業タイプが欲しい、男子が欲しいなどの裏テーマが存在する可能性大)であり、決して楽勝ではないこともお伝えしておこう。

 

もちろん、変化の兆しはある。

 

私が注目している動きは、京都での取り組みである。

 

京都府人材確保・定着支援協議会という組織が立ち上がり、大学、自治体、経済団体などがスクラムを組んで、中小企業と若者の幸せな出会いをつくるために奮闘している。京都は日本でも大学と学生が多いエリアとして知られているが、地元企業を紹介するサイト、イベント、個別のカウンセリングなど至れり尽くせりである。何度か会合に参加したのだが、参加者の熱を感じた次第である。

 

というわけで、具体的な出会いの場をつくる、安心できる仕掛けをつくるなどしないと、ダメなのだ。

 

そうそう、2年前に書いたこの本、現在でも評判がいいのだが、Kindle版が出た。ぜひ、手にとって頂きたい。

 

くたばれ!就職氷河期 就活格差を乗り越えろ (角川SSC新書)
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