トヨタ自動車から、ピンクのクラウンがトヨタから発売された。クラウンと言えば、トヨタ自動車を代表する高級車。広告業界の人間だけでなく、高度経済成長期に日本を支えて来た先人たちの中にも、「いつかはクラウン」「白いクラウン」という名コピーを覚えている人も少なくないだろう。

 

なぜ、トヨタ自動車は、ピンクのクラウンを発売したのか。プリウスではダメだったのか?往年の名車の復刻版ではダメだったのか?

 

結論から言うと、ダメだったのだ。

ピンクのクラウンの役割は、販売を増加させることでも、車ブーム再燃でもない。
なぜなら、ピンクのクラウンの役割は、販売を増加させることでも、車ブーム再燃でもない。まったく異なる目的があったのだ。

 

もし、販売を増加させることが目的であれば、プリウスでも良かったのだ。もし、車ブームを再燃させることが目的であれば、往年の名車の復刻版でも良かったのだ。他にも色々な形が考えられるのだ。しかし、トヨタ自動車が取ったのは「ピンクのクラウン」だった。

 

若者の消費行動パターンについて、少し説明したい。
現代の若者の消費行動には、大きく分けて3つの形がある。

1.等身大の消費
2.自己実現の消費
3.趣味の消費  

 

等身大の消費とは、自分の身の丈にあった消費だ。高度経済成長期のように、憧れの生活を実現するための消費はしない。また、バブル期のように、贅沢な消費もしない。今だけでなく、将来への不安もあるので、自分に適した消費しかしない。

 

自己実現の消費とは、自分磨きの消費だ。資格取得や語学習得はもちろん、カルチャースクールなど、一歩一歩自分が成長していることを感じられる消費をする傾向にある。明るい未来のための自分磨きには消費を惜しまない。

 

趣味の消費とは、自分のこだわりを持つ趣味への消費だ。食事を切り詰めても、貧乏になっても、自分の趣味には惜しみなくお金をかける。その趣味とは、一人一人違う。

 

「ピンクのクラウン」はそのどの消費パターンとも合っていない。

ではなぜ、ピンクという色と、イメージのもっとも遠いクラウンを選んだのか。また、アピール用に作るという方法を取らずに、販売するに至ったのか?

 

答えはこれだ。
トヨタ自動車は、お客様にだけでなく、社内の関係者にも、「トヨタは変わる」という本気を感じさせる必要があったのだ。
もともと、豊田章男社長はドラえもんCMに関連して「どこでもドア」カラーを発売したらどうだろうというような発言をしていた。それを受けて社員達がピンクのクラウンを作ってしまった。それを受けて、豊田社長は販売までの道筋をつけたのだ。これは素晴らしい経営判断だ。

 

ピンクのクラウンをイメージで使う中途半端なPRではダメなことを豊田社長はわかっていたのだ。今までのトヨタ自動車だったら、絶対にやらないことをする必要があったのだ。トヨタ自動車という会社、自動車産業という業界に、トヨタ自動車の社長、経営陣は強い危機感を持っていたことがわかる。

 

製品開発からコミュニケーションまで、一本の流れが出来ている「ピンクのクラウン」。社長、経営陣の強い決意がなければ、このプロジェクトは出来なかっただろう。

 

今日のワンポイント!マーケティングメソッド

ブランディングの目的は、認知度、売上、好感度向上という消費者だけのものではない。
社員や関係者に向け、意識改革を強力に促すために使うこともある。