早咲きの桜を見に来る観光客のために、開花した桜を見せたいという思いで動いた観光関係者に対し、地元住民から「薬を使ってまで咲かせる必要があるのか?」、「それは観光客をだますことになるのでは」といった懸念の声が上がったのです。

このニュースを読んでまず感じたのは、「事前に地元住民に意見を求める機会はあったのか?」という疑問です。

 

普通、街路樹へ病虫害防除の薬剤散布を行う際には、事前に近隣住民に対して回覧などでお知らせがあると思います。この場合、薬剤散布が好ましくないとは思っても毛虫に刺されるよりは防除してくれたほうが安心、と考える方が多いでしょう。しかし、今回散布されたのは開花促進剤で、そのことが住民の反感を呼んだようです。

 

ここでちょっと「開花促進」に目を向けてみましょう。本来は時期でない花や旬でない農産物が入手できるということの影には、管理する温度や日照時間といった環境条件を変えたり、薬(植物の成長ホルモン剤など)を使うといった「人の手が加えられている」という事実があります。今回のような植物ホルモン薬剤でいえば、種なしブドウを作るための「ジベレリン処理」は、代表的な例でしょう。

 

この事実を踏まえて…河津桜の件がなぜこんなにも大事になってしまったのかを一言で言うなら、「協議不足」に尽きると思います。こと「薬」に関しては過敏に反応される方も多く、その先に潜むリスク(あるいはその懸念)の方に視点がいってしまう方も少なからずいらっしゃるのです。実際、薬を使って開花させた桜の木にどういった影響があるのかは、追跡調査してみないことにはわかりませんしね。

 

また、薬剤を使って開花させる桜にどこかまがいもののような、例えて言うなら天然物と養殖物の違いのような感じを持つ方もいるのではないでしょうか。

 

実際にお知らせなり意見交換会のようなものがあったのかは定かではありませんが、観光関係者側の「最高の状態(この場合は桜が咲いた状態)で観光客をもてなしたい」という思いであるとか、使用する薬剤の詳しい情報などを示し、町ぐるみで盛り上げて行きましょうよ!という感じであれば話は違っていたかもしれませんね。

 

たしかに、観光客が増えれば町も潤うのかもしれませんし、誰しもお客様をお招きするときには部屋をきれいに掃除したり、できるだけ良い状態でお迎えしたいと思うものです。こういった心理を「見栄」と言ってしまっては身も蓋もないでしょう。でも、「自然には逆らえないのだから、咲くか咲かないかは桜任せでいいじゃない?何も薬を使わなくても…」という意見も至極ごもっともなわけです。

 

だからこそ事前の相談や意見交換が大切になるのですが…、さて今回の一件、「おもてなしの意」と見るか、はたまた「見栄を張ってしまった結果」と見るか…軍配を預けられた観光客も判断に苦慮しそうですね。