日本全体の医療費は42兆円!

国民に必要な医療を確保していくための基礎資料として、医療経済等の重要な指標になっている統計に厚生労働省の国民医療費があります。その統計から国民医療費や国民所得に対する医療費の割合等を、1955年度(昭和30年度)から直近の2016年度(平成28年度)まで表にまとめてみました。

国民医療費は医療機関等での病気やケガの治療に要する費用を推計したもので、診療費や調剤費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費等を含んでいます。ただ、先進医療費や差額ベッド代、正常な妊娠や分娩等の費用、不妊治療における生殖補助医療費、健康の維持・増進を目的とした健康診断・予防接種等の費用は含んでいません。もちろん美容整形費も含まれていません。

国民医療費、国民所得、推移

国民医療費と国民所得の年次推移


厚生労働省の国民医療費によると、2016年度(平成28年度)の1年間の国民医療費は42兆1381億円となっています。前年に比べて2263億円も減っていますが、割合にしたら僅か0.5%減にしかなりません。前年に比べたら減っている国民医療費ですが、長期的に見ればかなりの勢いで増え続けています。10年前と比べると9兆円も増加しており、平成が始まって間もない1990年度と比べると21兆円も増加しています。

人口1人あたりの国民医療費も33.2千円で前年より1.3千円減っていますが、人口が増減しても国民医療費と同様に長期増加傾向にあります。

国民所得に対する国民医療費の割合は、国民が負担する医療費の負担感をイメージできます。2016年度は国民所得391兆円のうち42兆円を医療費に使っているので、国民所得に対する国民医療費の割合は10.76%となっています。平成が始まった頃は6%程度でしたが、2009年度に10%を超え、その後も上がり続けましたが、ここ5年は11%を超えずに何とか踏ん張っています。ただ、国民医療費には先進医療や不妊治療等の費用は含まれていないので、実際の負担感はもっと大きいはずです。
 

薬局調剤医療費が20年で5倍強!

次に国民医療費を診療種類別(一般入院診療医療費・一般入院外診療医療費・歯科診療医療費・薬局調剤医療費)にわけて、1991年度(平成3年度)から2016年度(平成28年度)まで26年間の推移を表にしてみました。
 

診療種類別、国民医療費、推移

診療種類別国民医療費の推移


2016年度(平成28年度)の国民医療費に対する診療種類ごとの構成割合は、一般入院診療医療費が37.5%、一般入院外診療医療費が34.2%、歯科診療医療費が6.8%、薬局調剤医療費が18.0%、他に入院時食事・生活医療費が1.9%、訪問看護医療費が0.4%等となっています。

グラフをみると、歯科診療医療費を除いた3つの費用が年々増加していることがよく分かります。特に薬局調剤医療費の増加率が高く、20年前(1996年度)と比べると一般入院診療医療費は1.51倍、一般入院外診療医療費は1.16倍、歯科診療医療費は1.12倍になっているのに対し、薬局調剤医療費は実に5.27倍にもなっています。増加額でみても6.1兆円増で一番増えています。
 

国民医療費の6割が65歳以上! 

国民医療費は直近では僅かに減ったものの、長期的にみれば増え続けてきました。大きな要因として高齢化の影響が考えられます。そのことは下記の年齢階級別の医療費を見るとよく分かります。

年齢、国民医療費、診療種類

人口1人あたりの年齢階級別国民医療費(診療種類別)


一般入院診療医療費は0歳を除いて年を重ねるごとに増加し、85歳以上では1人あたりの医療費が582.2千円もかかっています。一般入院外診療医療費と薬局調剤医療費は20歳前後が最も少なく、そこから徐々に増えて80歳~84歳でピークに達しています。歯科診療医療費は75~79歳で最も多く36.1千円かかっていますが、年齢による差は比較的小さく、最もかかっていない15歳~19歳(10.1千円)との差は26.0千円となっています。

医療費全体でみると42兆1381億円のうち65歳以上で25兆1584億円になり、全体の60%にもなります。40歳以上で計算すると35兆8886億円になり、全体の85%にもなります。かかる医療費は年代によって大きく異なっていることがよくわかります。
 

自助努力による備えもしておくに越したことはない

ひと昔前に国民医療費に関する記事を書いた時は「国民医療費が増え続け、国民所得に対する比率も10%超えが目前」と書きましたが、あっという間に10%を超えてしまいました。国としては高齢化で医療費が今後も増えていくことは想定しているはずで、賄っていくだけの財源があれば特に問題にはなりません。もし足りなければ、患者負担を増やすか健康保険料や消費税を上げる等によって、社会保障制度が持続していけるようにすると考えられます。

国民一人一人ができることは、健康診断を欠かさずに受け、病気を早期発見・運動をして健康をこころがけて、医療費を抑制させることです。また、医療費を国に頼りきるのではなく、保険や貯蓄等で安心できる備えもしておくとよいでしょう。