eスポーツって何が楽しいの?

スプラトゥーンと野球の図

野球とeスポーツ。キーワードは「観戦」です

ガイドの父は巨人ファンでした。でした、と言いますか、今は実家に住んでいないので確認してませんが、おそらく今も巨人ファンでしょう。そして、プロ野球だけでなく、高校野球も見る人でした。ガイドが子どもの頃の夏休み、父が家にいると、昼間は高校野球、そして夜はプロ野球のナイターがテレビを独占していました。蚊取り線香の煙と、父のタバコの煙。ビールのおつまみの枝豆を少し分けてもらって、一緒になんとなく画面を眺めていました。

当時、父が観ているというだけの理由で、なんとなく一緒に眺めてはいたものの、子どもの頃のガイドは野球にはあまり興味が無く、あんまり面白くはないものだと思っていました。大人になったら面白くなるのかなと思ったりしたものの、いまだに、スポーツの中継はあまり観ることがありません。でも、最近ああこれか、この感じかと思うことがあります。ゲームの観戦です。

ガイドの父は草野球もする人でした。ほとんど観に行ったことはありませんが、会社の草野球チームに所属していたようです。ガイドがこれだな、と思ったのはその部分です。ゲームの試合を観戦するとなんで面白いと思うのか、それは、自分自身がプレイヤーであるからでしょう。最近、ゲーム業界で盛んに取り上げられるeスポーツ。しかし、どうしても賞金の話であるとか、オリンピックの種目になるかどうか、みたいな話題が目立ちます。一方で、eスポーツの何が面白いのか、何が楽しいのかと言う話は、意外と語られていないように感じます。

eスポーツの楽しさで非常に大きなウェイトを占めるのは観戦です。観戦の楽しさなくてはeスポーツの盛り上がりはあり得ないとまで言い切れます。その観戦の楽しさについて、お話してみたいと思います。
 

eスポーツは、競技である

スマブラの図

同じゲームでも、eスポーツ的な遊び方と、そうでない遊び方があったりもします

まず最初に、eスポーツってなんだろう? と言う話を少ししておきたいと思います。eスポーツと聞いて、ゲームなのに「スポーツ」とつくのはおかしい、と思う方もいらっしゃるようです。スポーツを運動と捉えると、確かに変ですね。運動はしていません。

しかし、eスポーツという言葉が意味するのは、運動というよりは、競技でしょう。競技としてのゲーム、ということです。ゲームの中には、1人で遊んで物語を体験するようなものもあれば、みんなで遊ぶけど上手下手があまり関係なく楽しめるものもあります。

例えば、任天堂の『大乱闘スマッシュブラザーズ(以下スマブラ)』シリーズというゲームがあります。任天堂のキャラクター達が戦い、画面外にふっとばした方が勝ちという対戦アクションゲームです。このゲームは、プレイヤーキャラクターはもちろんのこと、ステージギミックや、アイテムなどに、任天堂の様々な作品の要素がこれでもかと言うほど登場します。

スマブラはそんなアイテムやステージギミックの要素を調整して遊べます。例えば、8人対戦でギミック満載のステージにアイテムが大量に出てくる設定で遊ぶと、何が起こるか分からないにぎやかなバトルが楽しめます。何が起こるか分からない分、多少の実力差があったとしても、運次第で勝敗が大きく変わります。逃げ回っていたら、相手同士が潰しあいをしてくれるかもしれません、ステージの罠にひっかかってくれるかもしれません、モンスターボールから伝説のポケモンが出てきて、周りを一気に吹き飛ばしてくれるかもしれません。それはもちろんすごく楽しいんですけど、こういうものは、競技的とは言わないでしょう。

同じスマブラで、アイテムは一切出ないようにして、ステージのギミックもなし、1対1で遊ぶこともできます。一気にシンプルになって、運の要素が減り、その分プレイヤー対プレイヤーの技術が試されます。こういう状況で技術を競い合う、つまり競技的なゲームをeスポーツと呼んでいるわけです。

eスポーツはスポーツか否か、みたいな言葉の定義に関する議論は一旦横に置きまして、勝っても負けてもワイワイ楽しいという遊び方以外にも、真剣勝負で技術を競い合うゲームの楽しみ方があるんだな、ということがご理解いただければと思います。
 

プレイヤーであることと、声を出すこと

ゲーム大会の図

ガイドは、マリオカートやハースストーンなどの小規模なゲーム大会イベントをよく開催しています

ガイドは、eスポーツという話題がこれほど盛り上がる以前から、ゲームの観戦という楽しさを肌で感じていました。というのも、ガイドは6年前から『ゲームルーム』というゲームイベントを毎週金曜夜に開催していまして、そのゲームルームの中で、ゲーム大会を催す機会が多くあったからです。みんなでゲーム機を持ち寄って対戦する大会を何度か繰り返していくうちに、盛り上がるポイントのようなものが分かるようになります。

ポイントの1つは、当たり前のことですが、そのゲームのプレイヤーが集まって観るということです。当たり前すぎますかね。でも、ゲーム仲間とのゲーム観戦、実際に体験したことがある人はそれほど多くないかもしれません。その楽しさは格別なのです、きっと体験したらビックリするぐらいなはずです。もし、その大会に選手として参加していたら、さらに良いでしょう。対戦して、勝ったり負けたりがあって、どんどん脱落していくわけですよね。強い人たちが切磋琢磨しているのを肌で感じて、そして上位の対戦を観るわけです。強い人はどんなプレイをするんだろう、興味が出ますよね。

ポイントの2つ目は声を出して観ることです。野球でも、サッカーでも、スポーツ観戦には、歓声というのがありますよね。ゲームでもあるんです。歓声を上げるには知識が必要です。今このプレイが勝敗を分ける、観る側がそれを分かっていると、勝負所で自然と歓声が沸きます。
 

次に何が起こるか予想できるから、裏切られる

スプラトゥーンの図

プレイしているからこそ、驚きや、感動分かります

例えば、スプラトゥーン2の観戦をしたらどうなるでしょうか。スプラトゥーンでは対戦をしている人の他に、観戦をするだけの観戦モードで参加することもできるので、この観戦モードを使って、第3者視点で観戦することが可能です。マップを表示すれば、どちらのインクが広く塗られているか一目瞭然ですし、また、両チームのプレイヤーの配置から誰がピンチかもすぐわかります。

赤いインクのチームと、緑のインクチーム、赤インクチームが大幅にリードを取って、終盤に入ります。緑のインクチームが次々に倒されます。倒された人はスタート地点へ。戦線に復帰するまでにさらに床は赤く塗られますから、観衆は緑の負けを確信します。みんなが戻るまでなんとか時間を稼いで戦線を維持しようとしていた緑のエースは、しかし3人に囲まれます。そこでBGMが「イマ・ヌラネバー!」に。この曲がかかったら残り1分。絶望の瞬間に、エースが赤チームの1人を倒します、3対1が2対1に。どよめく観客たち。動揺した相手にボムを投げ、後退させた隙に身を隠します。死角から障害物の上に登って、スペシャル技、上空から勢いよく落ちて周りを一気に倒せる「スーパーチャクチ」で2人同時に倒し、まさかの3人抜き。スーパープレイに観客が一気に湧きます、大歓声です。

そこに、先ほどやられていた緑チームの3人が戦線に戻ってきました。これで完全に形勢逆転。赤かった床が一気に緑に塗り替えられていきます。しかし、もともとは赤チームが大幅リードの状況、残り時間で塗り返せるか、間に合うか、というところでタイムアップ。

ジャッジの瞬間。先ほどとは打って変わった静寂が訪れます。赤が勝つか、緑が勝つか……判定は、僅差で緑! 観客からまたもや大歓声と、そして拍手が降り注がれます。

試合展開から勝敗の行方が予想でき、奇跡的なスーパープレイにわき、形勢逆転するも勝敗がくつがえせるかのギリギリの勝負で手に汗握り、そして固唾をのんでジャッジを見守る。そういう観戦は本当に楽しいものです。eスポーツにおいてこの楽しさが分かるのは、ゲームを遊びこんでいる人の特権なのです。
 

eスポーツが盛り上がるということ

eスポーツの図

ぜひ、観戦の楽しみを体験してみてください(イラスト 橋本モチチ)

子どもの頃、父が野球を観ていたその楽しみが、ちょっと分かるような気がするのです。野球の中継では、常に実況解説がついていて、選手の特徴や、1球1球の意味について説明していました。これが真剣に野球をやったことのないガイドには耳に入ってきません。しかし、ゲームであれば、その醍醐味が分かるのです。

自身がプレイヤーとしてゲームをプレイし、そしてその頂点の様子を当事者の1人として観戦し、それが同じプレイヤーの友達と一緒に歓声を上げながらであれば、なお楽しいでしょう。今のところ、この「ゲーム観戦」の楽しさはそれほど多くの人に広まっていないように思います。しかし、野球やサッカーの観戦に夢中になる人がいるように、ゲーム観戦も、とても楽しいのです。そして、その楽しさの話をせずに、eスポーツを盛り上げよう、というのはちょっと違うと思うのです。

だって、eスポーツが盛り上がるってどういうことでしょうか? すごくたくさんの人の注目を集めて熱狂が起こるということですよね? どうやって注目を集めるんでしょうか。何に熱狂するんでしょうか。それはもう、観戦でしょう。観戦がメチャクチャ楽しくて夢中になる人がたくさん出た時に、すなわち盛り上がったということになるんです。もし、学校や職場で「昨日のスプラの試合みた? まさかあそこで3人抜きはヤバすぎるでしょ」なんて話している人が何人もいたら、それはもう最高に盛り上がっていると言えるでしょう。今のところそんな光景は夢のまた夢ですが、向くべき方向はそっちの方だと思うわけです。

ゲームの観戦というのは、すごく面白いのです。ユーザー有志による小さなゲーム大会だとしても、実際に参加して、現場で戦った人たちと一緒に観戦するのは最高です。また、公式の大きな大会なら、オンライン予選などに参加して、そして決勝の様子をインターネットの生中継で観る、というのもいいかもしれません。その時も、スポーツバーのような感覚で、ゲーム友だちと一緒に観るとさらに盛り上がること間違いありません。

ガイドはeスポーツが盛り上がって欲しいと思っていますが、それはそこに、ゲームの新しい楽しみ方や文化があるからです。それをより多くの人に体験して欲しいと願います。