iTunesアフィリエイトプログラムのAPP除外

ゲーム情報誌の図

ゲーム雑誌がメインの情報源……という人はもはや少数派かもしれません

ファミマガという雑誌をご存知でしょうか。もしかすると今読んでいただいている方の中には、名前すら聞いたこともないという人もいるかもしれません。ファミリーマートの情報誌……ではなく、ファミマガは『ファミリーコンピュータMagazine』の略で、1980年代半ばから1990年代にかけて発行されていたファミコン情報誌でした。ガイドは小学生の頃、ファミマガに掲載されていた『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』の最新情報を読んで「なんと今回は3人パーティー……!!!」と大興奮したり、持ってもいない『よみがえる帝国アトランチスの謎』の攻略情報を眺めて空想で遊んだ気分を味わっていたりしたものです。

今、みなさんは新しいゲームの情報を何で手にいれるでしょうか? ゲーム専門誌で探す人ももちろんいらっしゃるとは思いますが、それはもはや少数派かもしれませんね。インターネットで情報を拾うという方も多いんじゃないでしょうか。そんなインターネットのゲーム情報がちょっと変わるかもしれません。

Appleは2018年10月1日以降、Appleが提供するアフェリエイトプログラムから、AppとApp内コンテンツを報酬対象外とすることを発表しました。つまり、iPhoneのアプリケーションを紹介してもアフェリエイトは得られませんよ、ということですが、このAppの中には当然ゲームが入ります。そして日本はスマートフォンにおけるiPhoneのシェアが非常に高い国ですから、この影響をもろに受けることが予想されます。
 

無数に増えたアフェリエイトサイト

ゲーム紹介サイトを見るユーザーの図

本当にこのサイトが紹介しているゲームはオススメなのか、疑わしいサイトが無数にあるのも事実です

スマートフォンで遊べるゲームの登場は、ゲーム業界を劇的に変えました。日本では海外と比較してPCゲームが広く浸透していない為、ゲームと言えばコンシューマーゲーム、ゲーム専用機で遊ぶものでした。しかし、スマートフォンの登場はその様相を一変させます。

スマートフォンの登場がゲーム業界にもたらした変化はいくつもありますが、ゲームタイトル数の爆発的な増加もその1つと言えるでしょう。物理的な流通を通す必要が無く、極めて小規模なゲームが配信できるスマートフォンのゲームは、市場の拡大に伴って、劇的に数を伸ばしてきました。

ゲームの数が増えれば増えるほど、今度はユーザーが何を遊んでいいのか分かりにくくなります。その解決方法の1つとしてアフェリエイトプログラムがあります。ゲームを紹介する人が、ゲームを遊びたい人とゲームを売りたい人を繋げれば、紹介者にもお金が入る。良い循環が生まれそうな仕組みですが、おそらくみなさんご存知のようにそう簡単な話でもありません。

アフェリエイトプログラムが広がっていくと、面白いゲームを紹介してお金も稼ぎたいという人ばかりではなく、とにかくこの仕組みを利用してお金さえ稼げればいいという人がたくさん現れます。彼らはSEO、つまり検索エンジン最適化の手法を用いて自分のサイトのアクセスを増やし、ゲームの質を厳選することなく、丁寧で分かりやすい紹介をすることなく、手軽に大量のゲームを大量の人に紹介しようとします。

ゲームの開発や販売が容易になって爆発的にタイトル数が増えると、どうしても全体の質は下がる傾向にあります。同時に、ゲームを紹介してお金を得ることが容易になった結果、紹介サイトが無数に増え、そして全体の質が低下していきます。結果、検索エンジンの検索結果が非常に残念なことになり、ユーザーは大量のゲームから遊びたいゲームを探す前に、遊びたいゲームを探せるサイトを探さなければいけません。
 

Appleの思惑

iPhoneの図

Appleの動向1つで、iPhone上のコンテンツに関わることは大きな影響を受けます

もちろん、中にはしっかりとゲームをプレイして、面白いゲームだけを紹介するサイトもありますが、有象無象が増えすぎている現状をAppleが快く思うわけもありません。AppleはアフェリエイトプログラムからAppを排除する理由について、『App Store アフィリエイトプログラムの変更について』というページで「新しいiOSとmacOSのApp Storeの開始により、Appの見つけやすさが一段と向上しました。」と説明しています。

つまり、外部サイトで探すよりもApp Storeで探してくださいね、と言っているわけです。Appleは2016年10月に、まずは米国で『Search Ads』というサービスを開始しています。Search Adsは、App Storeの検索結果に広告を出すサービスです。その後利用できる国を増やし、日本でも2018年7月から導入が開始されています。

大量に増えたアフェリエイトサイトに紹介料を払うことをやめ、自社がApp Store内で展開する検索連動広告に集約していく、ということになります。
 

成熟するモバイル端末向けゲーム市場

モンスターストライクの図

モバイル端末向けゲーム市場が成熟し、新規タイトルが食い込む隙間が、どんどん無くなっています

モバイル端末向けゲーム市場の成熟ということは以前から言われていることですが、今回のアップルの方針も、その一端であると言えそうです。儲かりそうだということでどんどんタイトルが増えていった成長期を経て、大手ゲームメーカーが開発費も広告費も大量につぎ込んでゲームを立ち上げていくなか、それに対抗できないタイトルの多くが埋もれていく、淘汰されていくというのが、今のモバイル端末向けゲーム市場です。

そんな中で、モバイル端末向けのゲーム宣伝ビジネスも、アフェリエイトによって大量に登場したゲーム紹介サイトが一気に数を減らすことになるでしょう。これは結局のところ、Apple自身が展開するサービスによって、アフェリエイトサイトが淘汰されていくという構図に他なりません。

こうなれば、App StoreのゲームをApp Storeで探すという流れと、Appleのアフェリエイトプログラムに頼らないで広告収入を得るメディアがゲームを紹介していく、という形に戻っていくことになると思われます。そういう意味では、ここにきて、従来からあるゲーム専門メディアの役割や存在感が増していく、ということもあるかもしれませんね。
 

ゲームは誰が紹介するのか

グラフの図

ゲーム宣伝ビジネスも、質が問われる流れになるとよいですね(イラスト 橋本モチチ)

最後に、そのゲームメディアについて少しだけお話しておきます。というのも、メディアの役割が大きくなっていくかもしれないとは書きましたが、今のWebメディアはメディアだけで完結しないからです。

2018年8月22日から24日にパシフィコ横浜で開催されていた、ゲーム開発者向けイベント『コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2018 (CEDEC 2018)』で『メディアが語るインディーゲームPR術 「つくって半分、知ってもらって半分」』という興味深いセッションがありました。

ゲームメディアの編集長、副編集長クラスによるインディゲームをPRする方法の講演ということで、大変に盛況なセッションでした。セッションでは、プレスリリースの書き方に始まり、ゲームメディアならではの視点で様々なPR術が語られました。

その中で、非常に面白いのは、メディアに載っただけでは成功しない、という話でした。冒頭に紹介したファミマガは、掲載された時の影響力が今のメディアと比べると、非常に大きかっただろうと想像できます。というのは、今と比較して、雑誌以外でゲームの詳しい情報を得る手段が極端に少なかったからです。そして限られた雑誌の紙面に掲載されることは、非常に大きな意味がありました。

しかし、今のWebメディアは掲載されただけでは大きな力は持ちません。セッションでは「バズる」という表現が使われていましたが、記事が大きな反響を呼んで、TwitterなどのSNSで共有されて、初めて大きな波が起こります。こういった波が起きるには、ゲーム記事自体が面白いことも重要ですが、ゲーム自体が特徴的であったり、単純に興味を引くものであるということが重要になります。これはつまり、メディアを通して「単に面白そうだから広める人達」をいかに獲得するかが重要であるという話です。

繰り返しになりますが、Appleは今回の施策によって、App Store内に広告を集約しようとしています。それはある意味で、アフェリエイトプログラムによって広がっていったゲームの宣伝を閉じていくことにもなります。一生懸命面白いゲームを探して丁寧に紹介し、アフェリエイトを行っていたサイトからすれば、Appleに右往左往させられるのはいい迷惑だということも当然あると思いますが、一方で、あまりに増えすぎたアフェリエイトだけを目的にしたゲーム紹介サイトが閉じていくことは、結果的にゲーム専門大手メディアの役割を大きくさせることになるかもしれません。

そして、ゲームメディアは、いまや情報が掲載されただけで意味がある存在ではなくなっています。その記事やゲームを面白そうだと思った人をたくさん集めることが、必要になります。モバイル端末向けゲーム市場が成熟するなかで、ゲーム宣伝ビジネスも淘汰が始まり、質が重要になるタイミングに来ているのかもしれません。