妊娠・妊活中の抗体検査で麻疹・風疹の抗体がなかったら……

検査に臨む女性のイメージ画像

妊娠前に麻疹・風疹抗体の有無を検査することが大切です


「検査をしたら麻疹の抗体がなかったのですが、今週期は人工授精をお休みして、予防接種を受けるべきでしょうか?」

麻疹流行の報道がされる中、私の勤務する不妊治療クリニックでもこのようなご相談をいただくことがぐっと増えました。同じように風疹の抗体がないことが分かった妊婦さんに「出産まで人と会うのは控えます」とお話されたこともあります。

麻疹も風疹も予防接種によって予防することが可能な疾患ですが、妊娠中はワクチン接種することができず、また妊活中も接種後は2カ月間の避妊期間が必要になります。

今回は、妊娠中に麻疹・風疹にかかることのリスク、母体と胎児に起こりうる影響、また麻疹・風疹予防接種後の妊娠のリスクとその考え方について解説します。


 

妊娠中の麻疹・風疹の母体・赤ちゃんへの影響

麻疹風疹のテーブル

麻疹・風疹のリスクや予防法の異同をまとめている


麻疹は、麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、空気感染、飛沫感染、接触感染によって感染します。感染力は極めて強く、抗体がない状態で感染者に接触した場合、90%以上が罹患すると言われています。

成人の場合、麻疹に罹患すると重症化しやすく、とりわけ妊娠中、妊婦の場合には、免疫力が低下しているために肺炎などの合併症を併発しやすく、脳炎、心筋炎などの重篤な合併症による死亡率も高くなります。

また、麻疹の発疹の発現後2週間以内の早期に、早産、流産を引き起こしやすいため、妊娠中の麻疹の感染はとてもリスクが高いのです。

胎児に奇形が生じる可能性は低いと考えられていますが、麻疹の抗体のない母親から生まれた新生児は麻疹に罹患すると重症化する可能性が高まります。

一方、先天的な奇形のリスクが高まるのは、妊娠中の風疹感染です。風疹は、風疹ウィルスによって引き起こされる感染症で、飛沫感染が主な感染経路で、感染力は麻疹よりも弱いと言われています。発熱、発疹、リンパ節膨張などの症状を特徴としていますが、風疹ウィルスに感染しても症状が出ない不顕性感染となることもあります。

風疹抗体のない女性が妊娠し、風疹に罹患した場合、風疹ウィルスが胎児に感染して、新生児に先天性風疹症候群を引き起こすことが分かっています。この障害は、妊娠初期であるほど発症しやすく、妊娠20週以降では発症は稀であるとされます。

また、感染していても、症状のでない感染を「不顕性感染」と言いますが、妊婦の方が症状の出ない風疹の不顕性感染した場合でも、先天性風疹症候群は発症し得るとされています。

そのため、感染に気づかないまま、胎児に影響を及ぼすことがあり、また出生後の新生児も数ヶ月間感染力を持ち続けると言われています。


 

妊娠中の麻疹・風疹予防に、妊娠前の予防接種は重要

麻疹、風疹ともに、ワクチンの予防接種での予防が最も効果があると言われています。

過去に麻疹、風疹に罹患したことが血液検査で確認されている場合には、一生続く抗体ができていますので心配いりませんが、「麻疹、風疹だと思っていたけれど、違う疾患だった」というケースもあります。妊娠を意識した場合にはご自身が子供だった頃の母子手帳を確認し、2回の予防接種を受けているか確認しましょう。

麻疹、風疹、ともに単独の予防接種もありますが、記事執筆時点では、麻疹単独ワクチンは入手困難な医療期間が多いです。一般的にも「MRワクチン」と呼ばれている「麻疹風疹混合ワクチン」で、両方の予防接種を受けることも可能です。金額は各医療機関ごとに設定されていますので、病院にお問い合わせください。目安としてはMRワクチンの場合、数千円~1万円ほどが相場です。

2回の予防接種では99%抗体を獲得できますが、過去に1度だけ予防接種を受けている場合には抗体が不完全な場合もあります。病院で抗体の有無を検査して、抗体がない場合には、予防接種を受けましょう。また、感染の有無、予防接種歴がわからない場合に、予防接種を受けることは、何も問題ありません。

注意点として、妊娠してから抗体がないと分かった場合でも、妊娠中の予防接種は認められていないことがあげられます。妊娠初期に風疹の抗体検査を受けますが、抗体がない場合には、感染に気をつけて過ごすしか予防法がなくなってしまいます。この場合には、妊娠した女性の家族の方が予防接種を受けて、できるだけリスクを減らすことも考慮しましょう。

予防接種を受けた方からのワクチンウィルスが他者への感染に繋がらないことは確認されています。ただし、抗体がある方でも風疹患者との濃厚接触により風疹が感染した事例はありますので、妊娠した場合には、風疹の流行時の人混みへの外出は控え、また感染者への接触もできる限り控えましょう。

そして、男性への予防接種はしなくてもいいのでは、という声もありますが、男性間での流行からパートナーへの感染に繋がってしまうことがありますので、妊娠を意識したカップルであれば、早期に夫婦での予防接種をお勧めします。


 

麻疹・風疹予防接種後の避妊期間と妊娠した場合の影響

麻疹・風疹の予防には、予防接種が有効なことをご紹介しましたが、予防接種後は妊活中であっても妊活を中断し、避妊期間を取る必要があります。

風疹ワクチン、麻疹風疹混合ワクチン(MRワクチン)は、生ワクチンに分類されるワクチンで、接種後には体内で風疹ワクチンウィルスが増えます。

胎児に感染する可能性を否定できないため、2ヶ月間の避妊期間を必要としています。理論上は胎児への感染を否定できませんが、2018年6月の記事執筆時点では、妊娠に気づかずにワクチンを接種した方、予防接種をしてから2ヶ月の避妊期間を空けずに妊娠した方から先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれたとの報告はありません。

麻疹、風疹ともに、妊娠を望むカップルにとっては脅威となる疾患ですが、予防接種により高確率で予防することができます。避妊期間の関係から妊活できない時期ができてしまうので、将来、子供が欲しいと考えた場合にはもちろん、流行を防ぐためにも、抗体の検査、予防接種を受けるなどの積極的な対策をお勧めします。

■参考文献