「心臓麻痺」による30代俳優の急死報道

心臓麻痺

日本でも年間5万人に発生すると言われている「突然死」。原因の6割を「心臓突然死」が占めると考えられています

報道によりますと、俳優のファン・チャンホ氏が心臓麻痺のため、32歳というお若さで急死されたそうです。実は日本国内だけでも、年間5万人もの方が突然死で亡くなられています。これからが期待されていたファン氏の命を奪った「心臓麻痺」とはどういう病気なのでしょうか。

まずは報道を引用します。

俳優ファン・チャンホ、心臓まひにより32歳で死去
2018年04月30日08時22分  [中央日報/中央日報日本語版]

KBSドラマ『チャン・ヨンシル~朝鮮伝説の科学者~』などに出演した演劇俳優ファン・チャンホが32歳の年齢で死去した。

所属事務所のマラソンエンターテインメントによると、ファン・チャンホは26日明け方に心臓まひで死去した。葬儀室はソウル聖母病院葬儀場に用意された。出棺は28日に行われた。所属事務所関係者は「所属事務所の俳優をはじめとしてファン・チャンホとともにした多 くの人々が3日間葬儀室を守った」と伝えた。 (後略)


上記報道でも、死因は「心臓麻痺」と発表されていますが、「心臓麻痺」という病名は医学的には実は存在せず、突然心臓が止まってしまうことに対して一般的に使われている俗語です。心臓が止まってしまう心停止の状態が3~4分続けば脳死してしまいます。そのため、心臓麻痺=死亡・突然死というイメージで使われているのでしょう。

「突然死」とは、予期していない病気の発生から24時間以内に死亡してしまうことです。実は、日本でも年間5万人が突然死で亡くなられています。一言で突然死と言っても、その原因、つまり実際に突然死を引き起こした病気は様々です。そして突然死のうち、心臓関係のもの、つまり「心臓突然死」が6割を占めると考えられています。


 

心臓突然死の原因となる主な病気

今回報道されたケースの場合、情報は少ないですが、それまで元気に活躍されていたことは重い内臓疾患は抱えられていなかんったのでしょう。そして、心臓関係であることから心臓突然死と考えられます。信号突然死を起こす原因となるのは、次のような病気です。

■虚血性心疾患
いわゆる心筋梗塞などの、心臓の栄養血管が閉塞して起こる病気です。心筋梗塞は中年期かそれ以後に多い病気ですが、ファン氏のようにお若い方にも時に起こるため注意が必要です。特にコレステロールや中性脂肪が極端に高い場合や、重症の糖尿病などの病気を持っておられる場合は、若年でも心筋梗塞になる場合があります。

■不整脈
様々なタイプがありますが、心臓が正しく拍動せずにピクピク動くだけの状態になり、血圧がほぼゼロになる「心室細動」というものがあります。つまり心臓が実質止まっているような状態で、この場合も突然死が引き起こされます。この心室細動を引き起こすタイプの病気も怖いのです。たとえばQT延長症候群、ある種の心室頻拍、WPW症候群などが挙げられます。逆に心臓の動きが極端に遅くなり、止まっているのと同様の状態になる病気、たとえば完全房室ブロック、洞不全症候群なども考えられます。

■弁膜症・心筋症
ある種の弁膜症や心筋症でも心臓突然死が起こることがあります。弁膜症では重度の大動脈弁狭窄症つまり大動脈弁が硬く狭くなり開きにくい状態や、心筋症では肥大型閉塞性心筋症(略称HOCM)などが突然死を起こし得る病気として知られています。 

■心筋症や川崎病などがある状態でのスポーツ
これはもちろんスポーツそのものが悪いという意味ではありません。何らかの背景になる病気、たとえば心筋症や川崎病、ある種の弁膜症や冠動脈奇形、その他前述の心臓病などがある状態で、スポーツや激しい運動などによる無理が加わると、心臓の状態が一気に悪化して止まってしまうことがあります。

■心不全
心臓がうまく動けなくなる状態で余裕がないため、何かのきっかけ、たとえばタバコや睡眠不足、過度の飲酒などで命を落してしまうことがあります。ファン氏の場合は急死されるまでお元気であったとのことですので、この心不全は該当しないように思います。

これらの原因疾患に加えて、喫煙や睡眠不足があれば心臓の状態が一気に悪化し、心臓突然死に至る場合があります。若年で健康体であっても、多忙で不規則な生活などの要素がある場合にも、注意が必要と言えます。


 

心臓突然死の前兆・予兆を知る方法

年間5万人もが突然死をされると聞くと、現在健康であっても、ご自身やご家族が大丈夫か不安に感じられる方も多くいらっしゃるでしょう。心臓突然死の前兆や予兆を知る方法としては、まずは定期検診で上記のような心臓病がないことを確認することが大切です。もし何らかの心臓病が見つかった場合は専門医と相談し、治療や定期検診の予定を立て、大きな問題が起こることを予防することが勧められます。

また、これまでに失神発作やめまい、目の前が真っ暗になるなどの発作経験がある人は要注意です。それ以外に運動時の息切れや、胸がパクパクと躍るような感じも含めての動悸、胸の痛み、締め付けられる感じなどの経験がある方も注意してください。血縁に突然死や心臓病の方がおられる場合も同じです。

そうした場合は一度心臓の専門医に相談し、心電図、胸部レントゲン写真、心エコー図などの検査を受けられることをお勧めします。結果に応じてさらに精密検査を受けるなり、時間をおいて再検査を受けたりすることは、安全確保に役立つでしょう。


 

心臓突然死の予防法・対策法・できること

全ての心臓突然死が予防可能というわけにはいきませんが、それぞれの原因疾患に応じて対策はあります。

たとえば虚血性心疾患なら、狭くなっている冠動脈をカテーテル(ステント)で広げるかバイパス手術を受けるという手がありますし、その虚血性心疾患の原因が糖尿病やコレステロールなどにある時はそれらの治療をすればその後の安全性はかなり変わります。

不整脈にはお薬やカテーテル治療、ペースメーカー、ICD(埋め込み型除細動器)などの対処が有効ですし、大動脈弁狭窄症に対してはカテーテル治療(TAVI)や弁置換手術、肥大型閉塞性心筋症(HOCM)にはカテーテル治療や手術などそれぞれに有効な方法があるのです。

もちろん日常生活の中にも原因がある場合は、運動を安全な範囲内に止めるとか、禁煙する、睡眠不足を解消するといったことも非常に有効です。避けられない病気もありますが、予兆のある病気や対策できる病気で突然に命を失わないよう、できる対策を行っていきたいものです。


心臓麻痺についてには小児科医師による「「心臓麻痺」という死因、現実にはないって本当!?」で詳述されています。その他、心臓突然死に関してより詳しく知りたい方は、「心臓突然死の原因・メカニズム」や、心臓外科手術情報WEBにて「虚血性心疾患」「心不全・心筋症」で詳述しておりますので、あわせてご覧ください。