「外れなし」として注目が集まるWOWOWドラマ

2003年、川上弘美の小説を原作とした『センセイの鞄』でスタートし、同作品で文化庁芸術祭優秀賞を受賞したWOWOWドラマ。2008年に「連続ドラマW」第1作である井上由美子脚本の『パンドラ』が東京ドラマアウォード・グランプリを受賞するなど、放送開始初期からその作品のクオリティに注目が集まっていました。

2018年公開予定の映画『空飛ぶタイヤ』や、大ヒットした『下町ロケット』を先行して制作したのもWOWOW。名作、怪作でドラマファンを魅了し続けるWOWOWドラマは単発も連続も映画のようなスケールで、格別の風格を感じます。
 

パンドラ

WOWOW初の連続ドラマ『パンドラ』 (画像はAmazonより:http://amzn.asia/fXuYdOq

今回は、様々なところで評価されるWOWOWドラマの面白さの理由について、一つずつひも解いていきたいと思います。


 

WOWOWドラマのここがすごい! 3つの要素

1.重厚な社会派ドラマを描き切る脚本がすごい

圧倒的なスピード感と臨場感、壮大なエンターテインメントに仕上がっている作品ばかりです。クライムサスペンスでは、目を背けたくなる現実を躊躇なく描き、社会派ドラマでは映像化するには、壁の高いと思われるテーマに取り組んでいます。『空飛ぶタイヤ』や『震える舌』『しんがり ~山一證券 最後の聖戦~』など実際に起きた事件をモチーフに、企業の不正や組織の闇を骨鋭く描き切るところはWOWOWならではと言えるでしょう。
 
2.挑む俳優の熱量がすごい

迫真の演技で魅せる俳優陣からも目が離せません。『空飛ぶタイヤ』では、ホープ自動車保証部の杉元(原作では男性)を尾野真千子が演じ、大きく揺れる心情をみごとに表現、『殺人分析班』シリーズでは、若い刑事を演じた小柳友が、2作目『水晶の鼓動』の爆弾が仕掛られた駅構内でのシーンで、最大の危機に直面する恐怖と責務をまっとうしようとする懸命に奮起する人間の究極を熱演、視聴者を引き込みました。

他にも、複雑な境遇の爆弾犯で演技に広がりを見せた『LINE』の瀬戸康史や、『血の轍』内に秘めたる強さを静かに見せた原田泰造など、俳優たちの新しい一面を引き出す土壌を感じます。
 

3.CMなしでクギヅケ度120%!完成度がすごい
CMがないので、物語が中断されることがなく、集中して楽しむことができますが、クギヅケの理由は、それだけではありません。ストーリーが面白いから、見逃せないから、クギヅケになるのです。

「ながら見」ができないので、ドラマが終わって、疲労を感じることも少なくありませんが、それは視聴者が満足している証拠。一冊の小説を読んだあとのような、読後感に似た感覚におちいるWOWOWドラマは、過去の作品を見直しても、やっぱりクギヅケになることに驚きます。

石の繭 殺人分析班

震慄のクライムサスペンス『石の繭 殺人分析班』 (画像はAmazonより:http://amzn.asia/7J37RYu


 

なぜ面白い作品をつくれるのか?


原作を丁寧に表現している

オリジナルの脚本もありますが、池井戸潤、東野圭吾、宮部みゆき、清武英利、横山秀夫など重厚な物語を広く取り上げるWOWOW。開局25周年記念作品『沈まぬ太陽』は日航機墜落事故を描いた山崎豊子原作の超大作、撮影に入るまでに1年以上を費やしたこだわりの全20話です。テレビ的に映すことよりも、その世界観を映像化する。スターではなく、物語を描く。そんな想いがドラマづくりを支えています。


優先されるのは視聴率でなく満足度

視聴率がないWOWOWで大切なのは加入率。その加入率に直結するのが、視聴者の満足度です。視聴者がドラマに満足するのは、作品がおもしろいかどうか。好きな俳優が出ているかどうかだけではありません。満足度につながる、2つの理由がありそうです。

1.チカラがある俳優が演じる
知名度、人気度ではなくチカラのある俳優が織りなすWOWOWドラマ。たとえば、アメリカの刑事ドラマ『コールドケース』の日本版『コールドケース ~真実の扉~』では、マグマのように湧き上がる悪意の薄気味悪さが漂います。それは、犯人役の甲本雅裕やユースケ・サンタマリアが、その「嫌な予感」を感じさせてこそ。『プラチナタウン』は大泉洋の誠実で力強い演説から生まれる世界観に引き込まれるなど、どの作品でも俳優の演技が存分に生きています。

2.視聴者が観たいドラマをつくる
視聴者が観たいと思う作品をつくる、シンプルな発想は満足度優先があるから。俳優のスター性や大人の忖度のためでなく、視聴者が観たいから、観たいものを描くのです。

また、スポンサーへの配慮を必要としないことに加え、本格的な作品を好む年齢層の高いユーザーがWOWOWには多いことや、『空飛ぶタイヤ』をはじめ社会派ドラマの成功で視聴者の期待がさらに高まっていること、WOWOWでのドラマづくりを希望するスタッフや俳優が増えていることが、本物志向のWOWOWを育んでいると考えられます。

コールドケース ~真実の扉~

未解決事件に挑む捜査チームを描く『コールドケース』 (画像はAmazonより:http://amzn.asia/f1OeDWq


 

レンタルやネット配信で観ることができる、おすすめWOWOWドラマ


1:ワンカットドラマで広がる新しさ 『三谷幸喜 大空港2013』

脚本、演出、監督は三谷幸喜。失敗が許されない完全ワンシーンワンカットドラマにはプロの技と大人の遊び心が生きています。竹内結子のカリカリ感、香川照之のトホホ感、池松壮亮の爆発感、生瀬勝久のマイウエイ感、家族のあれこれが一気に噴き出す空港でのドタバタに笑えます。

 

大空港2013

ドラマ史上に残る完全ワンシーンワンカットドラマ 『三谷幸喜 大空港2013』 (画像はAmazonより:http://amzn.asia/4DsaOxj


 2:高齢化社会を痛快に描く 『結党!老人党』

突如、政治への道を決心した主人公(笹野高史)が、グイグイと夢を実現させるエネルギーに笑いながらも感動が。高齢化社会の現実を気持ちよく描いた物語は、共感するシニア世代はもちろん、若いひとにとっても糧となる痛快な作品です。
 

結党!老人党


3:映画のような美しさと爽快感  『チキンレース』

どこまでも続く青い空、海が見える病院、緑豊かなドライブロードに心躍る作品は、事故のため45年間眠り続けた寺尾聡演じる主人公が19歳の心のまま、岡田将生演じる頼りない新人看護師と一緒に旅する物語。有村架純演じる厳しい看護師、松坂桃李の熱い不良も楽しめます。
 

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4:ドラマ史上に残る渾身の秀作 『空飛ぶタイヤ』

大企業の隠蔽に全力で立ち向かうひとたち。それぞれの立場からこぼれる言葉の重みに胸が痛みます。もがきながらも、「どう生きるか」を懸命に探り、決意し貫く難しさ。社会という組織に生きる誰もが息をのむ展開を力強く描いた傑作。
 

空飛ぶタイヤ

大企業の闇に立ち向かう名作『空飛ぶタイヤ』 (画像はAmazonより:http://amzn.asia/d9iGi1t

5:呼吸する余裕もない心理戦を見逃すな 『ルパンの消息』

ラスト20分の心理戦はWOWOWならではの緊迫感。観ているこちらも嫌な汗をかきながら、時計が気にしてしまいます。時効直前、動き始める事件の複層、周密に描かれる闇と光、横山秀夫作品の静けさと激しさを堪能できます。
 

ルパンの消息 [DVD]


 

WOWOWドラマのこれからは?

2018年には、銀行の不正を暴く社会派ドラマ『監査役 野崎修平』がスタート、巨悪に挑む主人公(織田裕二)の苦悩と勇姿、それぞれの立場が交差する銀行内のかけ引き、WOWOWの王道とも言える壮絶な戦いが楽しめそうです。

伊坂幸太郎のベストセラー『バイバイ、ブラックバード』も連続ドラマに。主人公のダメな男を演じるのは高良健吾、謎めいた大女を演じるんのは城田優、それだけで興味は尽きません。

2017年11月5日スタートの連続ドラマW『石つぶて ~外務省機密費を暴いた捜査二課の男たち~』では、佐藤浩市や江口洋介といった実力派俳優たちが競演、外務省の闇に迫る見逃せない1作となりそうです。

民放以外での制作が増えるドラマにおいて、WOWOWはまさに先駆者。ドラマを愛するツワモノたちが、これからも”本物のドラマづくり”に挑み、私たちを楽しませてくれることでしょう。