世界最大級の通信企業、中国移動(チャイナモバイル)の実力は?

世界最大級の通信企業、中国移動(チャイナモバイル)の実力は?

世界最大級の通信企業、中国移動(チャイナモバイル)の実力は?

中国移動(チャイナモバイル)は時価総額で米AT&T、ベライゾンと並ぶ世界最大級(およそ2千億米ドル前後)の通信事業会社です。中国の通信会社では、あとチャイナテレコムとチャイナユニコムがありますが、それら2つを足したものより3倍も大きな会社となります。

高い自己資本比率と4千億元を超える現金を持つ同社は、成長の緩やかな成熟企業と言えます。過去7年間で2桁の売上増を記録したのは一度のみであり、うち4期で営業減益ともなっております。低成長を反映し、株価も3年以上も80~100HKドルの間で横ばいが続いております。

ただ2016年は久しぶりに売上+6.0%増という近年では強めの成長が見られ、営業増益にも転じました。2014年の売上3.4%増、2015年の2.6%増という低成長からすれば大きな伸びです。背景にはデータ通信量が大きく伸びていることがあり、同社の収入減は音声からデータへと、しかもより高速な通信規格である4Gへと変わってきています。利益についても、2013年~2015年まで3年連続して市場予想平均を下回ったのでしたが、前期は僅かなら+0.3%上回って着地しました。

IoT時代を迎え、2020年には5G通信が始まろうとする中で、今後ますますデータ通信量は増えて行きます。以前のように携帯電話料金に毎月何万円も支払うなどという事はナンセンスな時代となって行きます。どこでも、安価に、高速に繋がる時代です。その中でどのような安定収益モデルを作っていくのか、また4千億元を超える現金の使い道にも注目されます。

なお、将来的にH株指数に同社とテンセントが採用される可能性も伝わっております。従来香港など海外に登記されている企業は、実質的に中国企業であってもH株に入りませんでしたが、規定が変わる可能性あります。

 

2017年上半期は小幅に増収増益、データ通信が牽引

2017年上半期の業績は売上が5.0%増の3889億元、純利益が3.5%増の627億元となっています。iPhoneを同社が取り扱う前は、収入の大半を音声通信サービスが占めていたのでしたが、時代は変わり、収入源は音声からデータへと移行してきました。規模の小さくなった音声通信サービス収入は前年同期比27%も減少しました。一方規模の大きくなったデータ通信サービス収入が28%も増加し、全体としてはプラスとなっています。

250百万元のデータ通信サービス収入をさらに細かく分けると、ハンドセット(スマホ、タブレット等)によるデータ通信が185百万元と多くを占め、次に固定ブロードバンド接続からのデータ通信が18百万元t続きます。ブロードバンドの契約者数は41%増えて9千万人を超え、一人当たり収入は5%増の54.9元、全体の収入額は50%の増収となりました。

同社はスマホなどのデータ通信料金について、無制限プランを発売し、他のライバル各社も同様に使い放題プランで競争しています。これが同社の、これまで多額のデータ通信料金を払っていた優良顧客からの収入減に結び付くと懸念されていたのですが、全体の収入は伸びています。

そもそも高額なデータ通信料金はビッグデータ時代にそぐわないものであり、基本的に自宅やオフィスなどの拠点でブロードバンド環境を構築し、その中で家族、社員全員が安価かつ高速に使い放題で通信を行い、拠点以外の空間は月に1~3ギガ程度を格安契約で済ませるのが世界標準となるでしょう。その中で同社は固定ブロードバンド事業を伸ばし、携帯通信網を使いたい人には無制限プランで囲い込んでいます。

端末などの製品販売を除いた通信サービス全収入は3億4800万元で、うち携帯(移動体)通信サービス収入は+4.3%増の319百万元でした。これでも2016年から伸びが加速しています。一人当たり収入は1%上昇して62.2元となりました。

また、全体の携帯電話契約者数も3%伸びており、8億6,700万人となりました。そして一人当たりの月間平均データ通信量は1.1ギガバイトとなり、これは前年同期の2倍近い通信量ともなります。

中国の都市部以外でデータ通信を自由自在に使いこなしている人(娯楽映像や音楽を使いたい放題)はまだ少ないと思われ、同社の「ブロードバンド+携帯データ通信」の組み合わせで伸びしろは残っていると思います。

順調に売上を伸ばしたものの、販売促進費や人件費がそれ以上に伸びたことで営業利益は2.8%増に留まりました。ただ豊富な剰余資金からの金融収益などもあり、最終純利益は3.5%増となりました。

 

特別配当のサプライズ

中国移動は2017年上半期に通常の中間配当一株当たり1.623香港ドル(純利益の約半分に相当)に加え、設立20周年を記念して特別配当3.20香港ドルを併せて支払うと発表しました。これはサプライズとなり、直後の株価も急騰しました。

仮に期末配当で1.60香港ドル出るとすれば、87.7HKDの株価で今期の配当総額は7.3%となります。ただ特別配当は続かないので、これを除外すれば3.7%ほどになります。今後12か月間の予想平均によると、米AT&Tの配当利回りは5.2%、ベライゾンで4.9%となり、米国大手の方が高配銘柄としてより魅力はあります。同じ香港の通信会社では、香港電訊合訂証券(HKTステープル証券、06823)が6.3%とより高水準です。

それでも、同社が4千億元を超える現金の使い道として増配を選んだ点は好感されます。毎年金額としては巨額の純利益を上げ、そしてその半分弱を配当として出し、残りを剰余利益として社内に積み上げてきました。しかしながら、現在ROEは10%近くにまで低下しており、剰余資金を事業へ再投資しても、昔のような高いリターンを上げることが難しくなっています。

それでは4千億元の使い道としてはもったいないので、その使用方法が注目(懸念も)されていたところで、特別配当という株主還元に動きました。もしかするとアップルのように株主還元策を一層強化し、剰余利益の殆どを配当か自社株買いで使ってしまう事とし、これから予想される巨額の5G設備への事業投資は借入金で行ったほうが、同社株の価値は上昇するかもしれません。

 

バランスシートは健全過ぎる、今後、株主還元が強化されれば・・・

絶対額としては毎年千億元を超える巨額の純利益を積み重ねていますが、成長感は殆どなく、成熟企業となりました。バランスシートは健全過ぎるくらいであり、剰余利益で膨れ上がった多くの株主資本と、それに見合う現金が積みあがっています。この余剰資金を事業へ再投資しても、期待できるリターンは2016年のROEで11%という水準でしかありません。

それであれば現金を配当もしくは自社株買いで使って消してしまえば、それに見合うだけ右側の株主資本も消滅します。すると一気にバランスシート規模が売上規模に見合うコンパクトものとなり、資本効率が増し、ROEも上昇し、結果的に株価も上昇するでしょう。

それを可能とするのがキャッシュフローの強さであり、昔ほどではないにせよ、毎年巨大な資本的支出(設備投資と買収資金)を上回る営業キャッシュフローが出ており、全ての年でフリーキャッシュフローが黒字です。つまり余分な現金など持つ必要ないのです。

株価は先週の中間決算発表で、特別配当を好感して急伸しました。特別配当は一回きりですが、今後株主還元を強化するサインと見られた可能性もあります。

 

長期に安定した株価と配当を狙うには良い候補

安定した利益と配当を続ける大型株です。成長性はあまり感じられませんが、株価も安定しており、ディフェンシブストックとしても見ることができます。

半導体の進化による大容量の高速データ通信は未来そのものを表します。石油の時代は終わり、ガソリンと何万個もの部品によって走っていた自動車は、半分以下の部品でできる「タイヤ付きコンピューター」という別物になります。家では音声認識AIが執事代わりに様々なタスクをこなすようになります。家電にも人工知能が入り、牛乳の量が残り僅かと冷蔵庫が感知すれば、自動注文によってアマゾンの倉庫からロボットかドローンが自宅に運んでくるようになるでしょう。

これら操作・運転は全てブロードバンドや携帯通信網で繋がり、通信会社は重要な役割を果たすはずです。現在同社は音声からデータへの移行をほぼ終え、3Gから4G、そして5Gへの移行とブロードバンドの取り込みを行っている段階です。将来どのようにあらゆるデータ通信をマネタイズしていくのか模索段階ですが、百万とある同社の通信基地局は大きな資産として残るはずです。

成長株ではないものの、また単に高利回りだけなら他にありますが、長期に安定した株価と配当を狙うには良い候補と思います。今後の株主還元策に期待の持てる事が判明したこともプラスです。

参考:中国株通信

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