「死亡年齢の平均」ではない! 意外と複雑な平均寿命の算出法

手をつなぐ老夫婦

年齢は基本的要素の1つです

人口統計の一つに、「生命表(life table)」というものがあります。意外かもしれませんが、皆さんがよく耳にする「平均寿命」というものは、この生命表の中で基本となる数値(関数)ではありません。

100人の死亡した年齢を足して100で割った数値、というような単純なものではないからです。

なぜ人口統計の生命表から切り離されて、「平均寿命」という用語が独り歩きするようになってしまったのでしょうか?

一つには、直感的に判った気分になれる言葉だからだと思います。「平均」は小学校の算数でも習いますし、「寿命」も電池の寿命というように普通の会話でも使われ、長い方が長生きで良いものだとパッとイメージできる単語です。要するに難しい数式や統計学的なことを知らなくても、「平均寿命」と聞いただけで誰でも理解できた気になれる言葉だからでしょう。その上、国際比較もしやすい数値なので、「日本の平均寿命は世界一長い!」という報道を聞くのも、何となく嬉しかったりするものかもしれません。

しかし、実際に多くの人が考えている「平均寿命」には、いくつかの誤解が見られます。単純そうな平均寿命ですが、実は数式を使わずに算出法を解説するのは難しい、なかなか複雑なものなのです。

 

平均寿命とは? 平均寿命の出し方を図で解説

人生の砂時計の上と下の砂の量が同じです

人生の砂時計の上と下の砂の量が同じです

そもそも「平均」と言っていますが、多くの人が算数などで習う平均とは、まったく意味が違います。右図をご覧ください。

少し難しく見えるかもしれませんが、年齢がX軸、生存数という関数がY軸です。年齢が増えると、自然と生存数は減って行き、右下がりの曲線となります。ある年齢で垂線を引くと、垂線の左上側と右下側に図形ができます。平均寿命というのは、この2つの図形の面積が等しくなる年齢に相当します

どうでしょう? こう聞いただけでも「思っていたのと違う…」と感じられるのではないでしょうか?

生存数を表現する砂時計があるとすると、上の砂と下の砂の量が同じになる年齢が平均寿命ということです。しかもこの砂時計の場合、砂の落ちる速さは一定ではありません。最初は少なく、後半に急に多くなります。単純に足して割る、という平均ではないのです。

それでは次に、平均寿命についてのよくある疑問や間違いについて、一問一答の形で解説しましょう。

 

「平均寿命-年齢」が大まかな自分の余命だ ⇒ ウソ

これはとても多い誤り。よく聞くのが、「女性の平均寿命が約85歳。今、私は40歳だから、あと45年くらいかしら」といった表現です。

平均寿命は、あくまでも「発表されたその年に誕生した人」の平均余命のこと。そもそも計算すること自体が間違いなので、この考え方は正しくありません。ひとつ言えるのは、現在40歳の女性の平均余命は45歳より長いのは確かです。

 

平均寿命を毎年報道するのは意味がない ⇒ ホント

こちらは正論。平均寿命は、「生命表」という統計の指標の一つ。国勢調査に基づくものを「完全生命表」と呼んでいますが、国勢調査は5年毎に実施しています。平均寿命だけ取り上げて毎年大きく報道されるのはやや不自然な感じがします。国勢調査での生命表は、「簡易生命表」と呼んでいます。

 

平均寿命まで生きるのは50%? ⇒ ウソ

誤り。生きるという表現に関係したのは平均余命ではなくて生命表の中で生存数という別の指標です。上の言い方に直接関係した指標があります。ただし、日本では平均寿命まで生きる確率は50%より大きくなっています。

 

高額な生命保険に入ると寿命がのびる ⇒ ホント

都市伝説的でいかにもウソな印象ですが、これはある意味で正解です。高額な生命保険に加入するときは、定期健康診断などによる審査があります。完全生命表、簡易生命表とは別に3つ目の生命表としての、生保標準生命表というものがあります。

もちろん、加入することで実際の寿命がのびるわけではありませんが、「のびる」の意味を完全生命表と生保標準生命表の差という数値的な意味で見ると、正しいことになります。

 

平均寿命は女性が長い ⇒ ホント

こちらは正解。日本を含めて、世界的に見ても女性の方が寿命が長い傾向になるのは事実です。遺伝因子と環境因子の両方が関係していると考えられます。

そして報道される平均寿命を気にする以上に、介護が必要となる期間を差し引いた、「健康寿命」を意識することが大切です。健康寿命は、個人個人が自立した生活ができる期間のことで、生活習慣で伸ばすことが可能です。食生活の改善と禁煙を、できることから始めましょう。