結核は過去の病ではない
千葉県船橋市は29日、市内で結核の集団感染が2件あったと発表した。
同市によると、1件は学習塾での集団感染。感染源は学習塾講師の30代男性とみられ、男性の家族2人、学習塾に通う生徒43人を含む56人が感染し、うち15人が発病している。時事通信によると、男性講師は入院し、他の感染者は通院して治療しているという。
もう1件は遊技場での集団感染。感染源は60代男性とみられ、男性が出入りしていた遊技場の従業員や利用者を含む8人が感染、うち6人が発病したという。
強い感染力を持つ結核とは、一体どのような病なのだろうか。感染症に詳しい西園寺克氏がAllAboutで解説している。
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結核の症状と原因
特徴的な症状は咳(数週間以上続く)、痰(血痰が出ることもある)、発熱(たいてい微熱だが、時に高熱を伴う)の3つ。咳が2週間以上続くと結核の可能性も考えられるため、診断時に結核の検査が含まれるという。また、症状が出てからさらに時間が経つと、上の呼吸器の症状に加え、疲労感や体重減少がある。初期症状を見逃しやすいので、かなり進行してから病院を受診する患者の方が増えているという。
結核の原因は、飛沫感染・空気感染する力を持つ「結核菌」。感染者の咳・くしゃみなどの飛沫や、空気中に漂う菌を吸い込むことで、呼吸器から感染する。感染する部位は主に肺なので、一般的に「結核」というと、ほとんどが「肺結核」を指す。脊椎カリエスや結核性腹膜炎などの病気を発症することもあるが、ごく稀だ。
結核の感染力・予防法
結核は空気感染するため、非常に強い感染力を持つ。一人が結核菌に感染して咳などで菌を排出してしまった場合、同じ部屋にいる人のほとんどは結核に感染すると考えてよいと西園寺氏は指摘する。さらに結核は発症までに数ヶ月から年単位の潜伏期間があるため、結核にかかっていてもすぐに分からない場合が多く、日常生活での感染予防は現実的には不可能だという。
集団感染が疑われた場合は、発症を予防するために「抗結核剤」という結核菌に効果がある薬を予防的に服薬。発症前に飲む場合は治療のための服薬と区別して「予防内服」と呼ぶ。服薬期間は通常6ヶ月。
ただし、結核を発症する人は感染した人の10人に1人以下。結核菌の保持者と同じ空間にいても発症するのはごく一部だ。
免疫力が弱まっていると高まる結核発症リスク
結核の発症は、栄養状態、睡眠、ストレスなどが深く関わっている。特に「栄養状態」が悪いと発症のリスクが高くなる。
加齢によって免疫は低下するが、年をとったからといって全員が発症するわけではない。別の病気になって免疫系を落とす治療方法をした場合、結核の発症率が高まることもある。また、AIDSに感染していた場合も結核の感染・発症リスクが高くなる。特に結核や結核の仲間の菌による病気はAIDS患者の死因となることがあり危険。可能な範囲でワクチン予防をするなど注意が必要になる。
結核の予防接種「BCG」は乳児に有効
結核に限らず、感染症予防にはワクチンによる予防接種が有効。結核の場合の予防接種は感染自体を予防できるものではなく、感染後の発症を予防したり、発症した場合の重症化を防ぐ目的で使われる。
結核に用いられるワクチンは「BCG」だが、発症予防の効果については実際のところ意見がわかれている。しかし、小児の結核重症化に対しては一定の効果があるという見解だという。日本では2005年4月から、生後6ヶ月までの乳児に対して予防接種を実施することになっている。
【関連リンク】
・結核(肺結核)の原因・症状
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