たった3割。それでも「絶対に専業主婦になりたい」と願う港区女子の奮闘【本当にあったアラサー婚活事件】

2021年の専業主婦世帯は約3割。7割以上は「共働き世帯」である。そんな中、「絶対に専業主婦になりたい」と願い、婚活に励む女性は、どんな思いを抱えているのだろうか。取材から見えてきた、リアルかつ切実な彼女たちの考え方と、日本の社会背景を考察する。


多様化する現代の恋愛・婚活事情。マッチングアプリや婚活サービスが身近なものとなり、出会いの手段が増えた一方で、失敗や後悔、忘れられない驚がくの“婚活事件”も増えている。恋愛ライター・毒島サチコによる連載「本当にあったアラサー婚活事件」の第4回は、実際のエピソードをもとに「専業主婦志望の女性の婚活」について紹介する(第3回はこちら)。
 

夜な夜な繰り広げられる「婚活マウンティング」

「彼氏が友達と浮気してたんです」
 
こう話すのは、末久さん(仮名・26歳)。彼女には付き合って3カ月になる恋人の拓也さん(仮名・32歳)がいたが、他の女性と関係を持っていたことが発覚。相手はなんと、末久さんの友人だと言うから驚きだ。
 
「もともと拓也とは、三田のタワーマンションで行われたパーティで出会いました。一緒にパーティに参加した友人の美奈子(仮名・27歳)が、彼と関係を持ってるとはそのとき思わなくて……」
 
末久さんと、美奈子さんはいわゆる“合コン仲間”。広告関係の仕事で知り合い、それから一緒に合コンや、パーティなどに出かけるようになったという。
 
「私は、2年前から、『絶対年収1000万超えのハイスぺと結婚したい!』と思い始めて。男性との出会いの場によく足を運んでいました。一方、美奈子は、特にまだ真剣に結婚とかは考えていない様子で。『えー!1年も婚活してるの?すごーい。私、婚活とか意識したことないけど彼氏は一応いる (笑)』って言ってきたり……。
 
なんとなく、マウントを取られているな、と感じることがあったんですけど、美奈子といるといいことがあって。彼女、すごく顔が広いし、IT企業の経営者とか、商社マンとか、そういうハイスぺ男性がいるパーティに私を誘ってくれるんです」
 

「婚活をしていても“一応”彼氏がいる」

美奈子さんは典型的な港区女子。夜な夜な港区のタワマンパーティに参加していた。驚いたのは、彼女には“一応”彼氏がいることだ。
 
「美奈子の口癖は『彼氏がいるけど、もっといい人がいたら全然そっちに乗り換える』でした。割と恋愛に自由奔放な感じで。私が拓也と付き合った報告をしたら『えーまじ? 拓也? セフレだった(笑)』って。「いつ?」って聞いたら、私と付き合ってた時期と被ってたんです。さすがにないなって思って、美奈子とは縁を切りました。とりあえずもっといい人探します!」
 
興奮気味に語る末久さんだが、怒りの矛先は拓也さんではなく、美奈子さんに向いている。

婚活は、男と女の戦いではなく、女と女の闘いだ……そう感じた瞬間だった。
 

2極化する婚活市場。「結婚至上主義層」と「しない層」

末久さんや美奈子さんは、積極的に出会いの場に足を運ぶ「恋愛・結婚至上主義」だ。
 
しかし、先日発表された内閣府の「令和4年版男女共同参画白書」で、デート未経験の20代男性は39.8%、20代女性は25.1%だと発表され、大きな注目を集めた。
 
20代男性では4割、20代女性では3割弱が「デート経験0」という結果に、SNS上では「デートする金銭的余裕や時間がない」など、 “デートをしたくてもできない”といった意見が上がった。
 
「絶対ハイスぺと結婚したい!」と意気込む末久さんにこの「20代男性、デート未経験4割」の結果を伝えると、こんな回答が。
 
「恋愛や結婚に興味がない男性が増えてるからこそ、婚活して早くいい人を見つけたほうがいいと思う。こんな時代だからこそ、しっかりお金を稼いでいる男性と結婚して、専業主婦になるのが女の幸せ」
 

「仕事に結婚に……と欲張って、タイミングを逃したくない」

やや時代遅れともとれる価値観を持つ末久さんだが、彼女のこの価値観はこんな考えから生まれた。
 
「いくら『家事や育児は分担しよう』って言ってても、出産は女性しかできないじゃないですか。子どもを持つとなると一旦は仕事を辞めなきゃいけない場合もあるし。さらに言うと、妊娠適齢期って、仕事が楽しい時期。『どっちも』って欲張って、結局中途半端になって、結婚や子どもを産むタイミングを逃した先輩をたくさん見てるので、私はそうなりたくない」

さらに続けて、こんな思いを打ち明けてくれた。

「結婚出産を諦めた私の周囲の女性は、日本の制度や、男性に対して文句を言いはじめる。その姿を見ていると、専業主婦で家庭を守っている女性のほうがずっと幸せに見えて。だから私は仕事よりも婚活優先。“結婚したら仕事は辞める”と決めて、ハイスペックな男性だけに的を絞って婚活をしています」
 

2021年の専業主婦世帯は3割。それでも専業主婦になりたい理由

「専業主婦になりたい」
 
そう断言する末久さんだが、現実、共働きが主流だ。
 
内閣府が発表した「人生100年時代における結婚と家族」の中の共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移を見ると、2021年の専業主婦世帯の割合は、全体の約3割。約7割が共働き世帯となる。
 
ちなみに、1985年では、専業主婦世帯が6割。共働き世帯が約4割で、専業主婦世帯と共働き世帯が逆転するという現象が起きている。
 
末久さんは先日、祖母にこんなことを言われたのだそうだ。
 
「『今の若い人は、仕事に子育てに大変だねぇ』と。祖父と祖母はお見合いで結婚して、その後ずっと専業主婦。その時代は、祖父の給料だけで生活できたし、専業主婦になるのが当たり前だったから、今も『いい人と結婚するのが女の幸せ』だと思っていると思う」
 
共働き世帯が増加している背景には、男女共に、収入が上がらないという点が挙げられる。働き方改革が進み「結婚しても働きたい」という女性が増える一方、「働かざるを得ない」という声もある。
 
「祖母が生きた時代は『結婚したら家庭に入り、旦那に養ってもらう』価値観だったからこそ、結婚、出産が安心してできたのではないかと思う。今は時代が変わったかもしれないけど、私は安心して専業主婦にしてくれる男性を見つけたい」
 
末久さんの婚活は続く。
 

※回答者のコメントは原文ママ


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【関連リンク】
令和4年版 男女共同参画白書
内閣府「人生100年時代における結婚と家族」
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